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[イワクニ 地域と米軍基地] 離着陸訓練 硫黄島で開始 岩国艦載機 騒音悪化か

 米軍岩国基地(岩国市)に所属する海軍の空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)が3日、東京・小笠原諸島の硫黄島で13日までの日程で始まった。FCLP後には九州沖の太平洋上で別の訓練もある。艦載機が岩国と訓練場所を行き来するため、同基地周辺では今月下旬まで騒音被害が悪化する可能性がある。(久保田剛、藤田智)

 厚木基地(神奈川県)の艦載機約60機を岩国に移転させる計画が3月末に完了してから初のFCLPとなる。在日米海軍司令部(同県横須賀市)は3日、中国新聞の取材に対し、訓練を始めたことを明らかにした。中国四国防衛局も同日、岩国市に通知した。

 岩国基地ではこの日朝から、艦載機のFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機やE2D早期警戒機などが離着陸を繰り返した。スーパーホーネットが、ごう音とともに6機連続で飛び立つ光景も見られた。

 防衛省によると、訓練にはスーパーホーネットなど4機種が参加する。訓練時間は午前11時~翌午前3時。各機は岩国から直接、硫黄島に向かう。

 艦載機の前の拠点だった厚木基地周辺では、FCLPとその前後の時期の騒音が増加傾向にあった。事前の集中訓練や、パイロットがFCLP後に空母への着艦資格を得る訓練(CQ)も行われるためだ。

 厚木基地のある神奈川県大和、綾瀬両市で2017年に市民から寄せられた騒音苦情をみると、今回と同様、硫黄島でFCLPがあった5月は計520件。厚木基地で実施された9月(計648件)に次ぐ多さだった。この2カ月間の苦情件数だけで全体の6割を占めた。

 CQは今回、今月中旬~下旬、九州沖で4日間程度実施される。岩国基地で夜間の離着陸が増える可能性がある。

 一方、悪天候などのため硫黄島でFCLPが完了できない場合、岩国、厚木など国内4基地が予備施設として指定されている。岩国市や山口県は岩国でFCLPをしないよう要請しているが、米側は確約していない。同市の山中法光・基地政策担当部長は「騒音の悪化など住民生活に影響があれば、改めて国などへの要請を検討する」としている。

陸上空母離着陸訓練(FCLP)
 空母艦載機のパイロットが、陸上の滑走路を空母の甲板に見立てて行う訓練。洋上の空母の限られたスペースに着艦する高度な技量を向上、維持するために行う。着陸直後に再び離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を繰り返すため、通常訓練と比べて激しい騒音が生じる。日米両政府は1989年、硫黄島(東京)での暫定実施で合意。日本政府は、恒常的な訓練施設の候補地に馬毛島(鹿児島県)の購入方針を示している。岩国では2000年を最後に実施されていない。

(2018年5月4日朝刊掲載)

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