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[イワクニ 地域と米軍基地] 大竹市長選 17日投開票 騒音問題の論戦低調

広島県内唯一 交付金受け取り/2候補とも基地容認

被害増 阿多田島に不満

 17日投開票の大竹市長選で、隣接する岩国市にある米軍岩国基地の騒音問題を巡る論戦が低調だ。大竹市が基地への米空母艦載機移転を容認し、広島県内で唯一、在日米軍再編交付金を受け取っていることや、現職と新人の候補者2人がいずれも「基地容認」の立場であることが背景にある。3月の移転完了後、基地に近い同市の離島、阿多田島では騒音被害が悪化している。深まらぬ論戦に島民はいら立ちを募らせている。(白石誠)

 今月上旬、島の阿多田港のすぐ沖合に浮かぶ海上釣り堀は、多くの釣り客でにぎわっていた。島の騒音は艦載機約60機の移転完了後、明らかに変わったと釣り堀の担当者は言う。「3、4機が連なって頻繁に飛んでくる。お客も驚くようになった」

本土との差拡大

 漁業が盛んな島の人口は約280人。基地の北東に位置し、最短地点で約6キロ。滑走路北側から飛び立つ米軍機の飛行ルート直下にある。島民の実感はデータに表れている。国が島に設置している騒音測定器では移転開始前の昨年7月、70デシベル以上を記録したのは78回。完了後の4月には477回と6倍に急増した。

 一方、本土の市中心部にあるサントピア大竹の測定器では4月は14回。移転前とほぼ変わらない。近くに住む40代の女性は「島では騒音が激しいと聞くが、ぴんとこない」。市の人口は約2万7300人。島と、市民の大半が住む本土との間で騒音状況の差が拡大している。

第一声で触れず

 市長選は、いずれも無所属で、現職の入山欣郎氏(71)=自民、国民、公明推薦=と新人の日域究氏(66)の2人の争い。ともに「国防のために基地は必要」との立場だ。両陣営は島民の訴えを認識しつつも、「騒音問題は大きな争点にならない」との見方を示す。告示日の10日、両氏は、市中心部での第一声で基地や騒音問題には触れなかった。

 市民の負担の対価と言える国の再編交付金を、市は2007年度から受け取ってきた。17年度は約4億6200万円。今後も含め、計約59億5200万円を見込む。「子どものために使う」とし、小学校の建て替えや小中一貫校のプール整備などに充ててきた。4月末、市役所近くに開設した無料の大型遊具広場の整備費約1億円も交付金で賄った。

 高齢者たちへのフェリー無料券配布など、島にも交付金の「恩恵」はある。本年度は漁協施設の改修補助も予算化された。しかし、激しくなった騒音に島民の不満は高まる。元漁師の男性(71)は「市役所は島の苦しみに応えてくれん」とつぶやいた。

 「島だけに負担が押し付けられてないか。市長選の論点にならない現状がもどかしい」と阿多田区自治会の元会長本田幸男さん(75)。騒音問題を巡り、島と本土で意識の「分断」が進むことを懸念する。

(2018年6月14日朝刊掲載)
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