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連載・特集

イワクニ 地域と米軍基地 移転の先 <2> 住民を思う情報公開を

「信頼」盾に相次ぐ非開示

 「沖縄ほど飛行規制が厳しくない。戦術的な低空飛行訓練をしている」

 昨年12月、米軍岩国基地(岩国市)の公式ホームページ(HP)に掲載された記事が波紋を広げた。沖縄を拠点にする輸送機オスプレイの運用部隊が岩国で訓練したと報じられた。地元は初耳だった。国は、岩国への飛来を「機体整備などのため」と説明していた。

 米軍の記事と国の説明はなぜ異なっていたのか。その後の取材に、米軍は「安全上の理由から詳細な飛行ルートなどは論じない」と回答。一方、国は「具体的ルートや訓練内容は米軍の運用に関わるため承知していない」。双方とも踏み込んだ説明をせず、結局分からなかった。

 米軍は、軍事情報である米軍機の訓練や運用の状況を明らかにしたがらない。「軍事施設の情報発信には細心の注意を払っている。隠しているわけではない。出せないのだ」。ある米軍関係者は指摘する。

 国も米軍に絡む情報の公開に後ろ向きだ。中国新聞は国に対し、在日米軍再編や岩国基地に関連するさまざまな行政文書の公開を求めた。不開示や黒塗りでの公開が目立った。

 例えば、「再編に伴う移駐にかかる調査について」と題された文書は、ほとんど塗りつぶされていた。理由に「米国との安全保障上の信頼関係が損なわれる」ことなどを挙げた。

 岩国市も基地との信頼関係を重視する。昨年12月、滑走路の運用時間(午前6時半~午後11時)外の離着陸が3日連続で続いた。基地はルールに沿って市に事前に通告していた。市はすぐに市民に知らせなかった。米軍から事前公表しないよう求められていたからだ。

 基地の周辺住民が、深夜や未明に離着陸する米軍機の情報を事前に知ることは、安心安全の観点から意義は大きい。しかし、基地のある地域によって情報の公開度合いに差があるのが実情だ。

 沖縄県の嘉手納基地の地元自治体は、そもそも米軍から時間外運用に関する通報を受けていない。一方、米軍三沢基地のある青森県三沢市は、米軍機の時間外運用の情報を事前に防災メールやHP、ケーブルテレビで発信している。情報提供しているのは国の出先機関だ。

 時間外運用の情報が一方では住民に伏せられ、一方では国が関与して事前に公表されている。この差には首をひねらざるを得ない。

 5月末から、岩国基地を拠点に、空母艦載機のパイロットが空母への着艦資格を得る訓練(CQ)が九州沖で始まった。艦載機の移転完了後、初めてだった。その際、米側は時間外運用に関する情報の事前公表を認めたが、今後も継続されるかどうか分からない。

 時間外運用の情報一つ取っても米軍の都合で公表、非公表が左右される。公開可能な情報も、住民に知らされていない実態はないだろうか。「米軍との信頼関係」を真に支えているのは、負担を受け入れている住民だ。国や自治体は、住民の思いに沿った情報の公開に向け、米側に強く働き掛けるべきだ。(久保田剛)

(2018年6月22日朝刊掲載)

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