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[ヒロシマは問う どうみる米朝首脳会談] 広島県朝鮮人被爆者協議会理事長 金鎮湖氏

半島から世界の非核化を

 「6月12日」は、70年敵対が続いてきた朝米関係に大きな変革をもたらした。敵同士だったわけなので、初めての会談でまず相手の考え方を探ったのだろうが、お互いに信じる姿勢を示し合った。今後さらに信頼関係を深め、朝鮮半島の平和体制を構築してほしい。

 昨年には、米国の圧力の末に戦争の可能性までいわれていた。会談も本当に実現するのか、うまくいくのかと同胞の間でも当日まで半信半疑な声があった。それが、翌日の「祝賀会」では「うちの指導者は大したもんだ」「誇りに思う」と沸きに沸いた。多くの同胞が同じ心情ではないか。

 日本の専門家や市民からは肯定の一方で、非核化の中身や期限がないとの否定的な声も聞こえてくる。だが、本国(北朝鮮)は米国の核、戦争の恐怖がなくなれば、その防止力である核を持つ理由はないと一貫して言ってきている。米国の出方次第で、いつでも非核化を進めると考える。

 米韓合同軍事演習の中止はその環境づくりの一歩になる。今後、朝鮮戦争の終戦宣言や休戦協定の平和協定への転換が進むかどうかに注目している。会談後、共同声明にある米兵の遺骨返還が進んでいるとの報道にも触れた。相互が歩み寄りを積み重ねれば、声明にある「朝鮮半島の完全な非核化」は一日二日では無理でも必ず実現するはずだ。

 被爆者として、共同声明に署名する際に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が述べた「世界は恐らく重大な変化を見ることになるだろう」との言葉に重みを感じた。朝鮮半島をアジア、世界の非核化への大きな出発点にという思いと受け止めたからだ。

 米国による広島、長崎への原爆投下で、多くの朝鮮半島出身者が亡くなった。本国は一昨年、国連の委員会で核兵器禁止条約の制定交渉開始の決議案に賛成した。米国の核の脅威が残る中で昨年開かれた交渉には結局出なかったが、この流れで非核化が実現すれば将来は条約に入るだろう。

 広島県朝鮮人被爆者協議会では、条約への参加と核兵器廃絶を訴える「ヒバクシャ国際署名」を同胞から約800筆集めた。世界の非核化と、平和体制の構築を広島から後押ししたい。(水川恭輔)

キム・ジノ
 1946年、現在の広島市安佐北区生まれ。胎内被爆者。2012年9月から現職。98年6月~10年6月には在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)広島県本部委員長を務めた。現在は同県本部顧問。

(2018年6月28日朝刊掲載)
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