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旧日銀広島に「木目」の素顔 広島市、国重文へ復元視野

 昭和初期の広島を代表する建築物で、被爆建物の旧日本銀行広島支店(広島市中区袋町)の内装に「木目塗り」という珍しい彩色技法が使われていたことが、広島市の調査で分かった。現在のペンキ塗装の下から見つかった。戦前の重厚なつくりをうかがわせる発見で、国重要文化財の指定を目指す市は復元も視野に詳しく調査する。(藤村潤平)

 木目塗りは欧州で家具装飾などに使われた技法で、チークやオークなどに似せた模様をペンキで描く。国内では国重文の函館ハリストス正教会(北海道函館市)や近代化産業遺産の釣島灯台(松山市)など、明治・大正期の洋風建築で確認されている。

 見つかったのは、1階事務室を見下ろすテラス状の2階廊下出入り口の鉄製ドア枠。4層ある塗装の、下から2番目に施されていた。戦後、上塗りされた可能性が高いという。2階にある支店長室のドア枠はチーク材が使われており、統一感や高級感を出すため施されたとみられる。

 市の委託を受け調査する文化財建造物保存技術協会(東京)の岡信治副参事は「非常に手の込んだつくり。爆心地近くで被爆に耐えた堅固さが内装からも伝わる」と説明する。

 市は2012年度から3年計画で、広島支店を、被爆後に復旧工事を施した1950年代の姿に戻すための調査を進めている。1、2階は被爆当時、よろい戸を閉めていたため大破や焼失を免れており、戦前に近い状態で復元される見通しだ。

 ただ木目塗りの下にさらに古い塗装があることから、市は別の鉄製ドア枠の塗装状況や過去の写真、資料と比較。どの状態に復元するか慎重に検討する。

 調査ではこのほか、支店長室の天井裏にシャンデリアを取り付けるための装飾彫刻が2カ所で見つかった。戦後設置された天井板で覆われていたため、確認できていなかった。

 市は14年度まで調査を続ける。15年度に工事計画をまとめ、文化財としての価値を高める復元に着手する。

旧日本銀行広島支店
 外装が石張りの鉄筋3階地下1階で1936年に完成した。ギリシャ風の装飾彫刻や渦巻き状の柱頭など古典様式が特徴。爆心地から380メートルにあり、原爆で職員たち約20人が亡くなった。被爆2日後に業務を再開し、92年まで支店として使われた。市は2000年、市重要文化財に指定し、日銀が土地・建物を無償貸与。国重文になった場合は無償で市に譲渡する。市は芸術・文化の活動拠点として貸し出しており、08、09年度にはスロープ新設や耐震補強など大規模改修をした。

(2013年1月4日朝刊掲載)

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