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平和行事

被爆直後に病理解剖 広島市南区できょうから 玉川氏の企画展

 原爆投下直後の広島で未知の「原爆症」究明に挑んだ広島大医学部教授、玉川忠太氏(1970年没)にまつわる企画展「病理学者、原子野をゆく」が3日、広島市南区霞の同大医学部医学資料館で始まる。原爆放射線の影響をいち早く調べた病理解剖の記録など、貴重な資料を初めて一般公開する。

 玉川氏は、医学部の前身である広島医学専門学校の教授として1945年8月29日から10月13日にかけ、被爆死した19人を解剖した。企画展では、うち2人(9歳男児と26歳女性)の解剖記録や、米国に接収、返還された病理組織のスライド標本など20点が並ぶ。骨髄や白血球の異常を示す記述も見られる。

 原爆をテーマにした阿川弘之の小説「魔の遺産」に登場する医師柳川忠助のモデルにもなった玉川氏。展示では、解剖を認めない県に対して「解剖せんで何がわかるか」と反発し、広島逓信病院(中区)そばのバラックで解剖した逸話も文献を基に紹介している。

 一連の資料は、医学部分子病理学研究室が保管。原爆放射線医科学研究所被ばく資料調査解析部が、焼け野原で立ち上がった先達に光を当てようと公開に踏み切った。同解析部長の田代聡教授は「被爆後の厳しい状況で医学者として信念を持ち、やるべきことを貫いた玉川氏の生き方を見てほしい」と話している。

 入場無料。9月20日までの平日の午前10時~午後4時。8月13~15日は休館。(馬場洋太)

(2018年8月3日朝刊掲載)

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