×

ニュース

国際交流の場に 11日「ひろしま盆ダンス」 外国人にも参加呼び掛け ブラジル 移民と海を渡り恒例行事

 広島市中区の旧市民球場跡地で11日にある「ひろしま盆ダンス」(中国新聞社主催)。外国人にも参加を呼び掛け、平和を喜ぶ新たな国際交流の場としても期待される。意外なことに盆踊りは、外国でも親しまれている。移民とともに海を渡り、継承されてきた。人々を慰め、心をつなぐ。盆踊りにはそんな力がある。(新本恭子)

 「盆踊りはブラジル全土で楽しまれている」。ブラジルの日本語新聞「ニッケイ新聞」の元記者で広島日伯協会理事の堀江剛史さん(43)=広島市南区=はそう語る。日本人が入植した各地で広がり、現地でも同じお盆の時季や入植祭に会わせ、地域ごとで大会が開かれるという。

 堀江さんは記者時代、各地の盆踊りを取材した。寺の境内や自治会館などにちょうちんを提げ、やぐらを囲んで輪になって踊る。焼きそばなどの屋台も出て大いににぎわう。「どこも、日本の盆踊りさながらの一体感。日系人だけではなくブラジル人にとっても恒例行事になっている」。5千人が一度に踊れる常設の盆踊り会場を備える町もある。

 サンパウロ市在住でブラジル広島文化センター(旧ブラジル広島県人会)副会長の村上佳和さん(77)=尾道市因島重井町出身=は、高校を卒業してすぐの1960年に単身で移住した1世。渡航2年後から暮らしたパラナ州マリンガ市では、既に盆踊り大会があった。「ブラジルにもあるのかと感激した。古里を思い出し懐かしくてね」

 「盆踊りには1世のいろんな願いが込められている」と堀江さんは言う。一つは文化の継承だ。習慣の異なる遠い地で、子や孫にいかに日本のことを伝えるか―。1世にとって重大な課題だという。さらにブラジルの人々に日本文化を知ってもらう狙いもあった。一緒にやぐらを囲む「共生のシンボル」として大事に根付かせてきた。

 堀江さんは「ブラジルでは、平和を体現する方法の一つとして盆踊りがあると感じた」と語る。「人種に関係なく楽しい時間を共有できるというのは、平和そのものじゃないでしょうか」

 国籍や世代を超え、一体感を楽しむイベント「ひろしま盆ダンス」。中区の基町や吉島、西区の横川など各地の団体による盆踊りに、来場者も加わることができる。中でもフィナーレの「総踊り」は会場全体を巻き込み、踊りの輪を広げる。

(2018年8月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ