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トランプ政権初の臨界前核実験 昨年12月 5年ぶり 核兵器願う国際世論に背

 共同通信の報道によれば米国が昨年12月、プルトニウムを用い、核爆発を伴わない臨界前核実験を西部ネバダ州で実施していたことが、核安全保障局(NNSA)の四半期ごとの報告書で明らかになった。トランプ政権下で初の実験で、米国として5年ぶりで28回目。NNSAは「新設計の核兵器の有用性を確認できた」とコメントしている。米国は1992年に地下核実験を停止し、97年から臨界前核実験を開始した。包括的核実験禁止条約(CTBT)の対象外と主張している。

【解説】米、核兵器の維持示す 是認姿勢 問われる日本

 米国が昨年12月、トランプ政権で初の臨界前核実験を行っていたことが明らかになった。遠い将来にわたって核兵器を維持する一貫した政策の表れであり、核兵器禁止条約に込められた「核兵器廃絶こそ緊急性を伴う課題」という国際世論に背を向ける実態を浮き彫りにした。(金崎由美)

 今年2月に国防総省が発表したトランプ政権の政策指針文書「核体制の見直し(NPR)」は、使用をためらわないことにつながる低出力兵器の開発などを明記する。北朝鮮に非核化を迫る一方、地下核実験を禁ずる包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准は目指さないと断言した。

 昨年秋に米エネルギー省が議会に提出した備蓄核の管理計画に関する報告書も、2020年代半ばまでの臨界前核実験の運用強化計画を盛り込む。今後も実験を継続するとみられる。

 米国の核への固執ぶりは政権を問わない。この強化計画にしても、オバマ前政権の2期目から引き継がれたものだ。オバマ前大統領は「核兵器なき世界」を唱えた一方、臨界前核実験を4回強行した。このほか、「Zマシン」を使う核兵器の性能実験などを、前政権時代から続けている。

 米国がそれらの実験を正当化する決まり文句の一つが「同盟国に信頼性ある核抑止力(核の傘)を保証するため」である。被爆国日本は同盟国の筆頭だ。これまで臨界前核実験などの実施が明らかになっても「CTBTに反する爆発実験ではない」と抗議する姿勢は示さなかった。

 しかし昨年7月に核兵器禁止条約ができた後は状況が異なる。条約はCTBTからさらに踏み込み、爆発を伴わない実験も含めて全面禁止するからだ。禁止条約が発効すれば、実験を強行する米国と、同盟国として是認する日本は国内外からこれまで以上に指弾されるだろう。

被爆地から怒りの声 言語道断/他国に非核化求められぬ

 米国が昨年12月、トランプ政権下で初の臨界前核実験を実施していたことが分かった10日、核兵器のない世界に向けた動きに逆行する米国の姿勢に、被爆地広島からは怒りの声が上がった。核開発競争の激化を懸念する声もあった。

 「トランプ氏は世界をどこに向かわせようとしているのか。言語道断だ」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は、5年ぶりとなる米国の核実験に憤る。徐々に批准が進む核兵器禁止条約や、核兵器廃絶を目指すヒバクシャ国際署名などを踏まえ「市民の願いを無視している。米国さえ良ければいいという姿勢の表れだ」と批判した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(73)は「核を手放すつもりはないと言っているようなものだ。それでは他国に非核化を求められない」と、朝鮮半島の非核化交渉を含む核軍縮の機運が後退すると懸念した。日本政府に対し「核兵器保有国と非保有国の間を橋渡しすると言うが、開発推進と廃絶は相いれない。廃絶という目標を共有するなら、堂々と開発中止を求めるべきだ」と注文した。

 米国は今年2月、小型核兵器の開発方針などを盛り込んだ「核体制の見直し(NPR)」を公表した。市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表(79)は「NPRの公表前から、既に新型核の開発に本腰を入れていたことが分かる」と指摘。「中国やロシアとの開発競争が激化しかねず、危険な動きだ」と批判した。(明知隼二)

(2018年10月11日朝刊掲載)

社説 米の臨界前核実験再開 これでは非核化迫れぬ

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