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社説・コラム

社説 米中間選挙 トランプ流 見直す時だ

 トランプ米大統領のやりたい放題の政権運営に、我慢ならない国民も少なくなかったということだろう。

 米連邦議会の中間選挙で、野党民主党が8年ぶりに下院の多数派を奪還した。共和党が過半数を維持した上院とは、「ねじれ」が生じた格好だ。

 「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の政策は見直しを迫られるだろう。就任以来、何かと物議を醸してきたトランプ氏である。ロシア疑惑や女性問題での追及、弾劾(罷免)に向けた動きも避けられないのではないか。

 大統領選の中間年にある連邦議会選は、就任2年のトランプ氏への信任投票ともいえる。改選議席が3分の1にすぎない上院と違って、全議席が改選される下院には、より民意が反映される。

 米経済はいま好調で、半世紀ぶりともいわれる低失業率という。そんな中での下院の選挙結果は、トランプ氏の政治姿勢への反発にほかなるまい。

 ところがトランプ氏はツイッターで、「とてつもない成功だ」とつぶやくなど、強気の姿勢を崩していない。トランプ氏を信奉する新人候補らを議会に送り込み、核となる支持層の心をつかんでいるという自負があるのだろう。

 確かにこの2年、トランプ氏は、大統領選で自ら掲げた公約を相次いで実行に移してきた。イスラム圏7カ国からの入国を禁じる大統領令を出し、環太平洋連携協定(TPP)やパリ協定、イラン核合意からの離脱を次々に表明した。制裁関税も乱発し、イスラエルの米大使館はエルサレムに移転した。

 核軍縮に意欲的だったオバマ前政権の核戦略を全面的に見直し、中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する考えも示した。

 いずれも国内外に及ぼす影響の大きさより自分の支持層を喜ばせることを優先したようだ。移民や女性、性的少数者への差別発言も繰り返してきた。

 そんな「トランプ流」にNOを突きつける力となったのは、若い世代だ。米メディアの調査では、今回、若者の3分の2以上が民主党に投票したという。意思表示をし、行動する米国の民主主義には希望が持てる一方、分断はより鮮明になった。

 懸念されるのは、トランプ氏がこうした民意を顧みることなく、これまで通りの政策を貫き続けることだ。既に投票前から共和党が敗れても自らに責任はなく、「候補者の責任だ」と唱えて予防線を張ってきた。

 トランプ氏は2年後の大統領選で再選を目指すという。議会のねじれによって公約が実現できなくなった時、議会の承認の要らない大統領令を乱発したり下院のせいにして責任逃れしたりする恐れもある。国内で身動きが取れなくなれば、外交や通商で成果をアピールしようと、相手国への要求をエスカレートさせないかも心配だ。対北朝鮮で性急な合意をするなど短絡的な政策に走るかもしれない。

 日本政府は早速「引き続き日米同盟に基づいてさまざまな分野で連携を進めていきたい」と表明した。だがトランプ政権との付き合い方を考え直す時ではないか。日米同盟一辺倒ではなく、国際協調をしっかり求めていかなければならない。

(2018年11月8日朝刊掲載)

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