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社説・コラム

国連のアリソン・スメイル事務次長に聞く 被爆継承「今こそ貴重」

施設内ツアーで実態伝える

 広島市を15日、訪問したアリソン・スメイル国連事務次長(グローバル・コミュニケーションズ担当)が中国新聞の単独インタビューに応じた。2030年までの達成を目指す国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の普及啓発を担う立場から、軍縮や平和の問題に取り組む意義を語った。(金崎由美)

 ―来日した機会に広島を訪れたのは、自分の希望だったそうですね。
 人類全てにとって重要な地で、歴史から学びたいから。私は元新聞記者で米紙ニューヨーク・タイムズのベルリン支局長だった時も、アウシュビッツをはじめナチスドイツの強制収容所跡をいくつも訪れた。

 ―広島で何を感じましたか。
 原爆資料館では、少年の三輪車などの遺品に胸を締め付けられた。国立広島原爆死没者追悼平和祈念館にある死者を悼む空間に身を置くと、物理的な破壊力だけでない、原爆被害の本質が伝わってきた。被爆者の小倉桂子さんの証言も聞き、社会的・軍事的な対立が深まる現在こそ貴重だと思った。

 ―国連でも被爆の実態を伝える取り組みがあると聞きました。具体的には。
 ニューヨークの国連本部など3カ所の国連機関で、見学者向けのツアーを用意している。広島と長崎の被爆資料も常設展示し、ツアーガイドにしっかり学んでもらっている。今年は計6人を1週間、広島市などの協力を得て被爆地に研修派遣する。私たちも事実を正確に伝える責任がある。ガイドの若者たちが情熱的に取り組んでいるのは頼もしい。

 グテレス事務総長が今年5月に発表した軍縮演説にもある通り、若者が軍縮に関心を持って参画する取り組みに力を入れたい。

 ―事務総長の広島訪問の予定はありますか。
 広島訪問中、たびたび聞かれた。本人にそのことを必ず伝える。

(2018年11月16日朝刊掲載)

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