×

ニュース

2019核問題の行方は 不透明な国際情勢 被爆地の発信強化へ

 米国による原爆投下から74年の2019年。核兵器廃絶に向け、明るい見通しが立たないままの年明けとなった。被爆地からのさらなる発信強化が求められる。ことしの動きを展望した。

【世界情勢と核】
 米国、ロシア、中国。経済・貿易分野も含めた外交関係における大国間の緊張が一段と高まっている。「新冷戦」とも呼ばれる状況の中で、核兵器を巡る状況は被爆地の願いと逆行する形で、不透明感を増している。

 2018年は逆風が吹いた。米国のトランプ政権が核兵器の役割強化を鮮明にした「核態勢の見直し」を公表したのに続き、イラン核合意からの離脱、さらにはロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を立て続けに表明。米国に対抗してロシアも新型の核兵器開発計画を公表したほか、中国も核戦力の強化を加速したとみられる。

 一方で、度重なる核・ミサイル実験で緊迫化していた北朝鮮を巡る情勢は、昨年に急展開した。歴史的な米朝首脳会談を踏まえて一定に緊張緩和の流れができたが、約束された「朝鮮半島の完全な非核化」をどう具体化させるかの協議が進まないまま越年した。ことし北朝鮮の核問題はまさに正念場を迎える。

 ことしは2020年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた準備会合も予定される。核軍縮の機運が再び高まらないようなら、条約そのものの存在意義が問われる。

トランプ大統領 INF条約離脱を表明 「核廃絶に逆行」 被爆地広島 怒りの声(2018年10月22日朝刊掲載)

社説 INF廃棄条約 米離脱 核の冷戦 後戻りさせぬ(2018年10月22日朝刊掲載)

社説 米朝首脳再会談へ 非核化の進展 大前提だ(2018年9月28日朝刊掲載)

【核兵器禁止条約の発効なるか】
 2017年の核兵器禁止条約の制定から3年目を迎える。50カ国が批准すれば発効するが、現状はその4割。しかし批准国の増加も見込まれ、条約推進の国際ロビー活動を続けている「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)は、ことしの年末までの発効を目指している。核保有国のほか、リーダーシップを取るべき被爆国の日本も条約に背を向けたままで、残された課題は大きい。

核禁止条約 日本は署名を ICANキャンペーン・コーディネーター ダニエル・ホグスタ氏に聞く(2018年11月26日朝刊掲載)

核廃絶 広島から行動を サーローさん、母校・広島女学院大で訴え(2018年11月24日朝刊掲載)

【ローマ法王 被爆地訪問へ】
 昨年12月、ローマ法王フランシスコが2019年に訪日し、広島と長崎を訪れたい意向を表明した。両被爆地では核兵器廃絶と平和を訴えるメッセージを発するとみられ、今のところ11月の後半以降になる可能性が高い。ローマ法王の被爆地訪問は1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来。ヨハネ・パウロ2世は「戦争は人間のしわざです」で始まる歴史的な平和アピールを読み上げ、冷戦下で核軍縮・核廃絶への世論形成に大きく貢献した。

「核廃絶の後押しに」 ローマ法王広島訪問意向 被爆者ら歓迎(2018年12月19日朝刊掲載)

【原爆資料館 リニューアル完成へ】
 耐震工事に合わせ、展示内容の大幅なリニューアルを進めてきた原爆資料館本館が4月25日に再オープンする。「被爆の実相」を伝える役割を強化するため、犠牲になった動員学徒らの遺品を遺影、手記とともに紹介する展示などを充実させる。核兵器禁止条約に関する展示も設ける。

 平和記念公園では原爆で壊滅した旧天神町の一部を発掘し、遺構を公開するための準備が本格化する。

原爆資料館本館 4月25日再オープン(2018年12月21日朝刊掲載)

旧天神町筋の舗装確認か 平和公園 広島市1次試掘終了(2018年12月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ