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連載・特集

2018年 県内重大ニュース 平和

 広島県にとって2018年は、激動の一年だったと言える。愛媛県今治市の刑務所の受刑者と、大阪府警富田林署から逃げた容疑者の逃走劇の舞台になり、全国的な注目を集めた。一方、広島市中区の紙屋町・八丁堀地区は国の都市再生緊急整備地域に指定され、都心浮揚の機運が盛り上がりつつある。西日本豪雨を除く県内の重大ニュースを振り返る。

平和

被爆者と政府 溝浮き彫り

 史上初の米朝首脳会談が開かれた6月12日、被爆地広島市でも多くの市民がテレビ中継に見入った。会談後の共同声明は「朝鮮半島の完全な非核化」を約束。被爆者団体からは「大きな一歩」と評価し、道筋の具体化を望む声が相次いだ。

 被爆者たちは核兵器禁止条約批准を迫る「ヒバクシャ国際署名」を推し進めた。3月、広島の被爆者7団体など県内77団体・1個人が推進連絡会を結成。2020年までに、県民の約半数の140万筆を目指す。

 しかし安倍晋三首相は平和記念式典に出席した8月6日、禁止条約に参加しないとあらためて明言。政府は12月の国連総会でも各国に批准を促す決議に反対した。被爆者たちの訴えと政府の姿勢の溝が浮き彫りになった。

 一方、17年のノーベル平和賞を受けた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長が1月に広島を訪れ、条約の重要性をアピール。授賞式で演説したカナダ在住の被爆者サーロー節子さん(86)も11月に市に帰郷し、市民と連携を深めた。

 12月はローマ法王フランシスコが広島・長崎を訪れたいと意向を示した。19年11月後半以降の可能性が高く、核廃絶の機運喚起へ被爆地の期待が高まる。

 展示の再整備が進む原爆資料館本館(広島市中区)の再オープンは19年4月25日に決まった。原爆投下で壊滅した街の遺構公開を目指し、平和記念公園(同)で試掘調査もあった。被爆者が高齢化する中、被爆の実態の効果的な発信につながるか、注目される。(水川恭輔)

(2018年12月29日朝刊掲載)

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