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連載・特集

ヒロシマの記録2018 7~12月 禁止条約 批准求める声

7月

2日 被爆者健康手帳を持つ被爆者の平均年齢が18年3月末時点で82・06歳    となり、17年同期より0・65歳高くなったことが厚生労働省のまとめで    判明
5日 広島市立小中学校で教職員の勤務を巡る法令の影響で17年の「原爆の日」    に登校日を設けられなかった問題で、市教委が18年は全小中学校の84・    4%が8月6日を登校日とし、平和学習をすると明らかに。市教委が文部科    学省と協議して法令の解釈を変更した上、学校現場で「8・6登校日」の意    義を見直す動きが広がった
7日 核兵器禁止条約の制定から1年
11日 益田市と安来市の被爆者団体が相次いで解散していたことが判明。島根県     内で活動実態があるのは松江、出雲、雲南の3市のみに
25日 旧広島藩主浅野家ゆかりの能装束や能面が、広島市の重要文化財に指定さ     れる。原爆被災をくぐり抜けた計32点▽広島県坂町の被爆者でつくる     「坂町原爆被害者の会」が7月末で解散することが判明
26日 被爆70年記念事業として編さんしていた「広島市被爆70年史」が完成     し、執筆を担った専門家グループが会見。1995年の被爆50年史以来     の刊行▽原水禁国民会議などでつくる在朝被爆者支援連絡会が、2008     年に確認された北朝鮮で暮らす被爆者382人のうち少なくとも1割強に     当たる51人が死亡していたと発表。現地の朝鮮被爆者協会による追跡調     査の中間報告で、連絡会メンバーが訪朝して聞き取った
28日 共同通信が全国の被爆者に核兵器禁止条約について尋ねたアンケートで、     「日本政府は条約に参加すべきだ」との回答が8割に上ったことが判明。     国連での採択に反対の立場を取り続ける日本に、被爆者の大半が強い不満     を抱き、署名・批准を求めている実情が明らかに

8月

3日 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルがまとめた報告書    が、北朝鮮による核・ミサイル開発の継続を明記していることが判明
6日 被爆73年の原爆の日。広島市の松井一実市長は平和宣言で、日本政府に対    し、核兵器禁止条約の発効に向けて国際社会に「対話と協調」を促す役割を    要請。条約を「核兵器のない世界への一里塚に」と訴えた▽安倍晋三首相が    式典後の記者会見で改めて核兵器禁止条約に不参加の立場を表明
8日 国連のグテレス事務総長が長崎市を訪れ、松井一実広島市長や田上富久長崎    市長たちと懇談。被爆者の訴えにも耳を傾け、「核兵器のない世界の実現に    向けた希望と決意を皆さんと共有する」と語る▽西日本豪雨が発生した7月    6日から「原爆の日」の8月6日までの1カ月で、原爆資料館の入館者数が    17年度に比べて25・4%減の10万5825人だったことが判明。土砂    災害による交通網の寸断などが影響▽米国ロサンゼルス市を中心に活動する    被爆者団体「米国広島・長崎原爆被爆者協会」(ASA)に、同市議会から    感謝状が贈られる▽来日中の包括的核実験禁止条約(CTBT)機構準備委    員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長が、世界で唯一の戦争被爆国の日本には    「核兵器なき世界の実現に向け、いかなる段階でも関与する道義的義務があ    る」と述べる
9日 長崎原爆の日▽国連のグテレス事務総長が長崎市で開かれた原爆犠牲者慰霊    平和祈念式典で「長崎を核の惨禍で苦しんだ地球上最後の場所にしよう」と    呼び掛け、核兵器廃絶に取り組む姿勢を強調。事務総長の長崎の平和式典出    席は初めて
10日 秋篠宮妃紀子さまが、長男でお茶の水女子大付属小6年の悠仁さまと平和     記念公園を訪問される。悠仁さまは初の広島訪問で、原爆資料館を見学
11日 踊りを通じて原爆犠牲者を悼み、平和を願う祭り「ひろしま盆ダンス」が     旧広島市民球場跡地であり、約1万5千人が訪れた。被爆翌年の1946     年に同じ場所であった「戦災供養盆踊り大会」が原点で中国新聞社が主催
21日 広島県主催の「ひろしまジュニア国際フォーラム」に参加した国内外の高     校生たち79人が平和を実現するための道筋を盛り込んだ「広島宣言」を     まとめる。核兵器廃絶に向けて国家が対話を深める場を持つ重要性を指摘
23日 東アジアの核軍縮の道筋を探る広島県主催の会議「ひろしまラウンドテー     ブル」が2日間の日程を終え、朝鮮半島の非核化や核兵器廃絶に向けて多     国間の外交交渉による安全保障組織の確立など具体的な行動を提言
27日 核兵器廃絶を世界に訴える日本の高校生平和大使20人が、スイス・ジュ     ネーブにあるICANの本部を訪問。フィン事務局長と意見交換
31日 原爆に夫を奪われた70人以上の妻が戦後を生き抜いたことで知られる広     島県川内村(現広島市安佐南区川内地区)で、残された妻のうち最後の1     人だった野村マサ子さんが97歳で死去

9月

4日 原爆投下後に降った放射性降下物を含む「黒い雨」を浴びて健康被害を受け    たのに、被爆者健康手帳などの交付申請を却下したのは違法として、広島市    などの住民が市と広島県に却下処分の取り消しを求めた集団訴訟で、同市と    安芸太田町の男女13人が広島地裁に追加提訴。原告は計88人に
6日 広島市が平和記念公園にある被爆建物のレストハウス改修について、再オー    プンが当初予定の19年度内から20年7月にずれ込むと発表。建物のコン    クリート劣化が想定より進んでおり、大規模改修が必要なため
12日 ローマ法王フランシスコがバチカンで宮崎市の一般社団法人「天正遣欧使     節顕彰会」の関係者と面会し「来年、訪日したい」と述べる。バチカンが     公表
13日 島根県の川本町議会が「非核平和の町宣言」案を全会一致で可決。唯一の     被爆国として非核三原則が完全に実施され、あらゆる国のあらゆる核兵器     の廃絶を訴える内容
26日 広島市で被爆後、台湾に渡った女性が長年、被爆者援護法の適用外とされ     たのは違法として、遺族が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広     島高裁は民法の除斥期間で請求権が消滅していたとして訴えを退けた一審     広島地裁判決を支持し、遺族側の控訴を棄却。除斥期間を巡って争われる     在外被爆者訴訟の高裁判決は初めて

10月

2日 全ての国に核兵器禁止条約の締結を迫る署名を推進する「ヒバクシャ国際署    名連絡会」は、9月末時点の集計結果が830万403人分だったと発表。    16年4月に始め、20年までに「世界で数億人」を目指す
10日 米国が17年12月、プルトニウムを用い、核爆発を伴わない臨界前核実     験を西部ネバダ州で実施していたことが判明。臨界前核実験はトランプ政     権下で初めてで、米国として5年ぶり28回目▽原爆資料館が、原爆に関     する約2300点の写真を米国とニュージーランドの計6機関から収集し     たと発表。爆心地近くの本川国民学校内(現中区の本川小)の救護所の様     子など
11日 米国が臨界前核実験を実施していたのを受け、原爆資料館が「最後の核実     験からの日数」を表示する地球平和監視時計をリセット▽公益財団法人ヒ     ロシマ・ピース・センターが、第30回谷本清平和賞に市民団体「核兵器     廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表を選んだ     と発表。原水爆禁止運動をけん引した被爆者の父森滝市郎さんは第4回の     受賞者で、親子での受賞は初めて
15日 平和記念公園地下に残る被爆遺構の展示公開に向け、広島市の懇談会が被     爆前に木造家屋や医院が立ち並んでいた「旧天神町筋」の一角を試掘場所     に決める▽原爆ドームそばのベンチなど平和記念公園内で複数の落書きが     見つかる
20日 トランプ米大統領が、米国と旧ソ連が結んだ中距離核戦力(INF)廃棄     条約について、条約を引き継いだロシアが違反してきたと非難。米国が離     脱する方針を表明
25日 原爆で親を奪われた子どもたちを受け入れた「広島戦災児育成所」の設立     者、故山下義信氏が残した220点余の全資料が原爆資料館に寄贈。「原     爆孤児」の日々や広島復興期の内実を伝える貴重な史料
30日 米国がINF廃棄条約の破棄方針を表明したのを受け、広島市の松井一実     市長が「冷戦時代の米ソが核開発競争に歯止めをかける大きな決断をした     条約で、引き継いでいくものだ」と述べ、核軍縮の後退を危惧

11月

1日 国連総会の第1委員会(軍縮)が、日本が提出した核兵器廃絶決議案を賛成    多数で採択。核の傘を提供する米国への配慮から核兵器禁止条約への直接の    言及を避けたが、米国は棄権した。一方、条約推進国が初めて提出した条約    批准を促す決議案も賛成多数で採択
5日 トランプ米政権がイラン核合意離脱に伴うイランの原油や金融などを標的に    した制裁の再発動に踏み切る。「史上最強の制裁」と強調▽広島市で始まっ    た「国際平和のための世界経済人会議」で、広島県の湯崎英彦知事が被爆か    ら100年を迎える2045年に「核兵器のない世界を実現する」との目標    を掲げるよう国連に働き掛ける考えを示す
8日 国連総会第1委員会(軍縮)で採択された日本の核廃絶決議を巡り、米政府    が採決前、核保有国に核軍縮を促すNPT第6条の明記に反対を表明し、日    米間に意見対立が生じていたことが判明。米国は決議が過去のNPT合意に    言及した点にも難色を示し、最終的に棄権
13日 平和記念公園内で複数の落書きが見つかった事件で、広島中央署がブルガ     リア国籍の男2人を器物損壊の疑いで書類送検▽日米野球に出場している     米大リーグ(MLB)オールスターチームのヘクター・ベラスケス投手     が、平和記念公園の風景に爆弾などのイラストを添えた不適切な動画を投     稿していたことが判明。会見を開き謝罪▽韓国の男性音楽グループ「BT     S(防弾少年団)」の所属事務所が、過去に原爆のきのこ雲がプリントさ     れたTシャツをメンバーが着用するなどの行為が不快感を与えたとして謝     罪を表明
14日 NPO法人ピースデポ(横浜市)が、朝鮮半島の非核化に向けた南北首脳     会談と米朝首脳会談の合意について、履行状況を監視する活動を始めたと     発表。3週間に1度をめどに特設ウェブサイトで報告▽原子力規制委員会     が定例会合で、東大や京大、近畿大、研究機関など計13事業者に対し、     管理する研究用原子炉や原子力施設計18カ所を常時利用する学生や研究     者の身元確認を義務付ける規則改正案を了承。犯罪歴や精神疾患の有無も     調べる
15日 長崎市での賢人会議の第3回会合が、核軍縮と安全保障の関係などを討議     して2日間の日程を終える
18日 「核兵器廃絶―地球市民集会ナガサキ」で、核兵器禁止条約の早期批准を     全世界に求め、日本政府に米国の「核の傘」依存から脱却して北東アジア     の非核化実現へ努力するように注文する「長崎アピール」を採択
21日 カナダ・トロント市在住の被爆者で、17年12月のノーベル平和賞授賞     式で演説したサーロー節子さんが広島市の松井一実市長と市役所で面会。     日本政府に核兵器禁止条約への署名と批准を進言するよう求める
26日 広島大本部跡地の被爆建物、旧理学部1号館の活用策を巡り、市の有識者     懇談会が広島大と市立大の平和研究機関を1号館に移し、新たに「ヒロシ     マ平和教育研究機構」(仮称)の設置を求める提案を明らかに
29日 韓国最高裁は、太平洋戦争中に三菱重工業に動員された韓国人元徴用工の     遺族たちが同社を相手に損害賠償を求めた2件の訴訟の上告審で、いずれ     も賠償支払いを命じた二審判決を支持し、三菱側の上告を棄却。同社の敗     訴が確定▽平和記念式典で献花の際に演奏されている「祈りの曲第1・哀     悼歌」を作曲した川崎優氏が94歳で死去
30日 米国の第41代大統領のジョージ・H・W・ブッシュ氏が94歳で死去。     1991年の米ソ首脳会談では、ゴルバチョフ氏と史上初めて戦略核兵器     を削減する米ソ第1次戦略兵器削減条約(START1)に調印した

12月

4日 被爆建物の旧陸軍被服支廠について、建物の一部を所有する広島県が大規模    な改修案をまとめたことが判明。平和学習の拠点として被爆証言などを聞く    建物や駐車スペースなどを新設
6日 平和記念式典の際、会場の平和記念公園でデモ行進による拡声器の声が響い    ていることについて、広島市が市民にうるさいと感じるかどうか尋ねるアン    ケートを実施。新たな条例による規制も視野に
7日 広島市が原爆資料館での核兵器禁止条約に関する批准状況の展示拡充を検討    する考えを示す
10日 被爆75年の2020年夏、広島市で開かれる広島交響楽団の「平和の夕     べ」コンサートに、世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチの出演が決     まる。被爆ピアノをモチーフにした新曲を世界初演
12日 平和記念公園の地下に残る旧中島地区の遺構公開に向けた広島市の第1次     試掘調査で、「旧天神町筋」の舗装の一部とみられるアスファルトなどが     確認されたことが判明
17日 ローマ法王フランシスコがバチカンで前田万葉枢機卿と面会。19年の終     わりごろに被爆地の広島・長崎を訪問したいとの意向を示す。実現すれば     1981年2月に広島・長崎を訪問した故ヨハネパウロ2世以来、2度目
20日 広島市が展示をリニューアル中の原爆資料館本館について、19年4月2     5日に再オープンすると発表

(2018年12月31日朝刊掲載)

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