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社説・コラム

『この人』 広島市立大広島平和研究所の次期所長に決まった 大芝亮さん

核廃絶へ理論生み出す

 広島市立大広島平和研究所(安佐南区)の次期所長に4月に着任し、新設の大学院平和学研究科長も兼務する。「国際関係を専門とする以上、いつかは広島で学びたいと思っていた。被爆地発の平和学や国際政治の理論を生み出したい」。現在は青山学院大国際政治経済学部の教授。市立大の打診を快諾した。

 2003年に広島県がまとめた平和貢献構想の策定に携わるなど、広島をたびたび訪れ、原爆資料館も繰り返し見学した。焼け焦げた三輪車などの遺品、子どもたちの遺影を前にして、国際関係を学ぶ理由を自問した。「核兵器は非人道性の極限。こんなことを二度と起こしてはいけない」と、胸に刻んだ。

 中学生の頃、「ネパールの赤ひげ」と呼ばれて結核医療や識字教育に尽力した故岩村昇医師に憧れ、国際貢献を志した。大学では開発援助や貧困対策など広義の平和への関心を深め、留学先の米イェール大で政治学の博士号を取得。一橋大などで教壇に立ち、日本国際政治学会では評議員を務めている。

 専門は、国際問題の解決に、国連や非政府組織(NGO)など国以外の団体や個人が果たす役割を重視する「グローバル・ガバナンス論」。核兵器禁止条約の採択にNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイ)キャン))が大きな役割を果たしたことを「対人地雷禁止条約に続く画期的な例」とみる。

 一方、現状では、核兵器は廃絶が望ましいが、当面は抑止のために必要だとする「現実論」が根強いと分析する。「使用を前提とした抑止論は、広島のモラルとして選択肢に入らない。そこを出発点に、抑止を乗り越えて廃絶に向かう理論を被爆地から生み出していきたい」と語る。

 長男、長女は既に独立し、妻と2人暮らし。毎週末には教会に通い、家庭菜園で有機野菜の栽培を楽しむ。兵庫県出身。(明知隼二)

(2019年1月9日朝刊掲載)

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