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被爆者 懸念や怒りの声 米、小型核弾頭の製造開始 廃絶求め米露に文書

 米国が爆発力を抑えた小型核弾頭の製造を始めたことを受け、広島の被爆者たちは30日、核軍拡競争や核使用のリスクを懸念し、相次いで怒りの声を上げた。

 「広島、長崎の被害の実態を考えれば、核兵器は廃絶しかない。どうして新たに製造するのか」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(76)は憤る。

 米国は昨年2月に公表した新たな核戦略指針「核体制の見直し」(NPR)に爆発力が低い小型核の開発を明記し、現実化すれば核使用のハードルが下がることにつながると懸念されていた。「小型でも放射線の恐ろしさは同じ。ブレーキをかけなければ」と話す。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(74)も「許せない」と批判。「米政府をおかしいと思う米市民も多いはずだ」と話し、廃絶を求める署名活動などで米市民と連携する重要性を訴える。

 米国は小型核開発をロシアに対抗するためとし、中距離核戦力(INF)廃棄条約の離脱方針も示す。広島、長崎両市は同日、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領に宛てて廃絶へのリーダーシップを果たすよう求める文書を米ロの大使館にファクスした。

 文書は松井一実・広島市長と田上富久・長崎市長の連名で有効な代替策がないままでの同条約撤廃を危惧し、「理性に基づく対話と努力を」と求めている。広島市平和推進課の松嶋博孝課長は「小型核を含め、核開発競争の背景には米ロの疑心暗鬼がある。両国間の信頼構築が重要だ」と話す。

 広島県平和推進プロジェクト・チームの下崎正浩担当課長も「核軍縮に完全に逆行している」と懸念。県主催の有識者会議「ひろしまラウンドテーブル」などで核兵器廃絶に向けた議論を深める考えを示した。(水川恭輔、明知隼二)

(2019年1月31日朝刊掲載)

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