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社説・コラム

天風録 『印パ緊迫』

 仲良しぶりを世界に見せつけたいのだろうか。安全保障理事会の3月の議長国フランスと4月に交代するドイツがこの2カ月、共同議長になるそうだ。70年を超す国連の歴史でも例のない試みらしい▲国連ができるまで、仏独は何度も戦火を交えてきた。特に鉄鉱石と石炭を産出する国境のアルザス・ロレーヌ地方は、どちらの領土か互いに譲らなかった。今では欧州の平和の担い手に▲南アジアで国境を接するこの両国も戦争を繰り返してきた。国境地帯の領土を巡って角突き合わせるインドとパキスタンである。先日は互いに戦闘機を出して交戦状態に陥った。いずれも核兵器を持つだけに、周辺国の緊張が高まるのも無理はあるまい▲インド軍機が隣国の領内に入るのは半世紀近くなかったことだ。対立の激化に国際社会が危機感を募らせる中で、パキスタン政府は対話を求めて、拘束したインド兵士を解放した。このまま収束へ向かうといいのだが▲残念ながら悲観的な見方もある。間近に迫る総選挙をにらみ国民に強硬姿勢を示したい―。インド政府からはそんな思惑もうかがえる。仏独のような関係になるまで、どれほど信頼を積み重ねる必要があるのだろう。

(2019年3月6日朝刊掲載)

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