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連載・特集

艦載機移転1年 <下>  膨らむ基地

移住3800人広がる交流

時間外運用の通知後退

 真新しいアリーナに英語と日本語の歓声が響く。今月2日、岩国市愛宕町の運動施設「愛宕スポーツコンプレックス」で市民と米軍関係者がミニ運動会に汗を流した。日米合同のチーム対抗で綱引きや玉入れを楽しみ交流を深めた。

共生に一歩前進

 運動施設は米軍岩国基地への空母艦載機移転に絡み日本側が整備し、米軍に提供した。「池子の森自然公園」(神奈川県逗子市)に次ぐ国内2例目の日米共用の運動施設として昨年7月に全面オープン。岩国市の福田良彦市長は「日米友好のシンボル」と強調する。

 艦載機の移転完了で軍人や軍属、家族約3800人が岩国へ移住する。米軍関係者は1万人を超え、市人口の1割に迫る。市は「国際性」を地域の魅力としてアピールし、日米交流イベントや英語教育を積極的に推進。地元経済界には経済効果への期待も高まる。

 基地側にも新たな動きが見られる。昨年6月、米軍の役割などを地元に説明する広報活動を開始。市議と自治会関係者を基地に招き、管制塔や駐機場を公開した。参加した川西地区自治会連合会の村上寛会長(78)は「訓練の必要性が分かり、地域と共生しようとの思いも伝わった」と振り返る。

 昨年末には正月三が日の軍用機運用を「極めて最小限に絞り込む」とする異例の事前公表も。発表文には「昨年まで続いた慣習からの新たな一歩」「地元にとっての正月三が日の重要性を鑑みた」とつづられた。

 市によると、今年の三が日に基地周辺で測定した米軍機の騒音はゼロ。これまでは「三が日は訓練をしない」とする岩国日米協議会の確認事項や市の自粛要請にもかかわらず飛行が繰り返されただけに一定の前進と受け止める関係者は多い。

具体的回答なし

 半面、極東最大級となった軍事拠点は「別の顔」も見せる。その一つが滑走路の時間外運用を巡る市への通知方法だ。米軍は昨秋以降、滑走路を共用する海上自衛隊の時間外運用を海自に代わって通知するようになり、時間外に飛ぶのが米軍か海自かも明かさなくなった。

 市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」は今年2月、適切な情報開示を米軍に求めるよう市に要請。久米慶典顧問(63)は「艦載機の移転完了後、騒音被害はひどくなり、事故機も多い。情報公開の後退は許されない」と訴える。

 さらに基地が管理する滑走路北側の一般向け道路「パブリックアクセスロード」は2017年6月末から「保安上の理由」で閉鎖が続く。10年の滑走路沖合移設で廃止された市道に代わる住民の散歩コースでもあり、市は3度、解除の見通しなどを基地側に問い合わせた。しかし具体的な回答はないという。

 「良き隣人」「基地との共存」―。艦載機の移転完了を機に市と基地が目指す地域の実現には双方のさらなる対話と理解が求められる。(松本恭治)

(2019年3月30日朝刊掲載)

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