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日韓被爆者 体験を継承  交流団体結成へ 大邱市訪問

広島の団体「次世代につなぐ」

 長年にわたる在外被爆者支援活動が、日本と韓国をまたぐ被爆体験継承と平和交流へ、新たな一歩を踏み出す。「韓国の原爆被害者を救援する市民の会広島支部」(中谷悦子支部長)が19日、韓国・大邱(テグ)市を訪れ、韓国原爆被害者協会の現地支部と交流団体を結成する。在韓被爆者も日本の支援者も高齢化する中、「被爆者はどこにいても被爆者」と寄り添ってきた思いを次世代につなぐ。(桑島美帆)

 「40年以上、在韓被爆者の裁判や被爆者健康手帳の取得を手伝い、役割を果たすことができた。今度は、日韓両国の友好親善を担う人たちに後を継いでもらうため、土台をつくらねば」。被爆者の豊永恵三郎さん(83)=広島市安芸区=は力を込める。

 大邱市内で開く記念交流会では、李鐘根(イ・ジョングン)さん(89)=安佐南区=が被爆証言をする。在日韓国人として学校や職場で二重の差別に苦しんだ体験も、語るつもりだ。「私自身が多くの日本人に支えられたことも伝えたい」と心待ちにしている。

 市民の会は、朝鮮半島を植民地支配していた日本で被爆した韓国人を支えようと、1971年に大阪府で発足。72年に豊永さんたちが広島支部を結成し、日韓両国から放置されていた被爆者の渡日治療などを支援した。「日本国外に出たら援護制度の対象外」とする日本政府に対し、在韓被爆者らが提起した数々の訴訟を弁護士らと全面支援。法廷闘争を通じて政府を動かし、海外からの被爆者健康手帳の交付申請や健康管理手当の受給を実現させた。

 2016年には、在外被爆者にも日本国内と同じく医療費が全額支給されることになり、制度上の差別是正に一定の道筋がついた。「今こそ、将来の日韓を見据えた支援と交流を」となった。厚生労働省によると在韓被爆者数は、昨年3月末現在で2241人。10年前より687人減った。一人一人の過酷な体験と記憶は、歴史に埋もれてしまいかねず、体験継承は喫緊の課題だ。

 市民の会の世話人で韓国出身の安錦珠(アン・クンジュ)さん(55)=西区=は「韓国では被爆体験が知られていない」と痛感している。「この機会を、被爆体験や被爆者問題への関心を高め、ともに取り組むきっかけにしたい」と話す。

(2019年4月1日朝刊掲載)

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