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原爆慰霊碑を移設 小屋浦「今夏は新しい地で」

 原爆投下後に多くの被爆者が救護された坂町小屋浦地区で5日、犠牲者を弔う原爆慰霊碑の移設作業が始まった。昨年7月の西日本豪雨で土砂崩れの被害を受けたことなどを踏まえ、安全のため同地区内の小屋浦公園に移設する。

 32年前の建立時に工事をした造園業田川房雄さん(78)=海田町=と石材店経営金子建治さん(58)=坂町=が協力し、社員たちと作業した。重さ約600キロの慰霊碑本体を重機で取り外し、公園に移送。その後、自然石とコンクリートの土台を削岩機などで砕いて解体した。

 慰霊碑はJR呉線沿いの山際にあり、線路を横切らないと行けない場所にあった。訪れる遺族や地域の子どもの安全や、豪雨による被害を踏まえ、移設を決めた。月内の完成を目指す。

 この日は、坂町教委が1991年に発行した被爆証言集の「碑の台座に埋葬者の遺品66品が埋め込まれている」との記述を基に、遺品の有無も確認しながら作業したが、見つからなかった。碑を管理する地元の「原爆慰霊碑を守る会」の西谷敏樹代表(73)は「遺品を確認できなかったのは残念だが、今夏には新しい場所で遺族を迎える。地域に碑を知ってもらうイベントも開きたい」と話した。

 同地区には原爆投下後、広島市内で被爆した人たちが運ばれた。市の広島原爆戦災誌(71年)によると、一帯には約150人が埋葬された。碑の側面には確認された93人の名が刻まれている。(明知隼二)

(2019年6月6日朝刊掲載)

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