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基町高の「原爆の絵」追う ノンフィクション刊行

 高校生が被爆者の体験を聞き取って「原爆の絵」を描く基町高(広島市中区)の活動を追ったノンフィクション「平和のバトン」(くもん出版)が17日、刊行される。著者のジャーナリスト弓狩匡純さん(60)=東京=が12日、市役所で会見し、「過去の悲劇を継承する世界でも類をみない手法を、広く知ってほしい」と執筆の狙いを語った。

 「原爆の絵」は、生徒が約1年にわたり、被爆者と対話を重ねながら証言を油絵に仕上げる。同高が2007年度に開始し、これまでに生徒118人、被爆者37人が参加した。

 弓狩さんは14年末から広島の戦後復興を取材する過程で活動を知った。約1年半かけて、被爆証言者の児玉光雄さん(86)たち被爆者と元生徒のペア4組を軸に取材。生徒が自らの心身で被爆者の記憶を受け止め、苦しみながらも作品に結実させ、自身も成長していった過程をたどった。

 弓狩さんは「災害や戦争の悲劇を後世に伝えるには経験者を(リレーの)アンカーにしてはいけない」とタイトルに込めた思いを強調。小学校の高学年以上の読者を想定している。会見に同席した同高教諭の橋本一貫さん(60)も「子どもたちが自分にも何かできると感じてくれたら」と期待した。四六判160ページで、カラー図版12点も収録。1620円。(明知隼二)

(2019年6月13日朝刊掲載)

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