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核禁条約 政府に行動促す 「署名 被爆者の思い」 広島市平和宣言の文案

 広島市の松井一実市長がことしの原爆の日の平和記念式典で読み上げる平和宣言に、「被爆者の思い」として日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める内容の文言を盛り込む方針であることが12日、分かった。宣言で明確に政府に対して条約の署名・批准を求めるよう市に要望している被爆者団体などの声に応え、政府に核兵器廃絶への行動を促す。

 関係者によると、一日も早い廃絶を目指して禁止条約を推進する被爆者たちの声を重んじ、政府による署名・批准を「被爆者の思い」と明言する方向。松井市長は昨年の宣言で「一里塚」などの表現で署名・批准の求めを含意したとしていたが、今年は「署名」「批准」の文言を使う。

 今年の平和宣言を巡っては、被爆者団体や反核団体が日本政府などに対し明確に禁止条約の署名・批准を求めるよう市に要望している。一方、松井市長は宣言で市から政府への個別政策の注文・批判よりも「被爆者の体験、平和への思い」の発信を重視する姿勢を堅持。このため、「被爆者の思い」を押し出して署名・批准を求める文言で最終調整しているとみられる。

 関係者によると、文案では若者たちに向け「8月6日を体験した被爆者の声を聴いてほしい」と呼び掛け、自国第一主義の台頭や核兵器廃絶への動きの停滞に触れて「戦争を起こさない理想の世界」を目指す重要性も強調する方向だ。

 同日、市役所で有識者や被爆者の懇談会があり、松井市長が非公開で文案を示し、おおむね了承された。

 松井市長は終了後の記者会見で、「政府に対して署名批准を求めることが分かるような文案にした」と説明。「自分の宣言の書き方は貫きたい。それを(被爆者団体の要望と)調整する中、こういう整理でやるといって賛同を受けた」と述べた。

 松井市長はほかに、被爆者の短歌や、非暴力・不服従を唱えたインドのマハトマ・ガンジーの言葉を引用する方針を説明。文案の具体的な文言は明らかにしなかった。平和宣言は松井市長が8月6日までに起草する。(水川恭輔)

(2019年7月13日朝刊掲載)

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