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被服支廠の歩み 本に 市民団体 年内に作成 証言や写真など募る

 広島市内で最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の保全・活用を目指す市民団体が、被服支廠の歩みをまとめた本を作る。現地で被爆した元動員学徒たちの体験記や、被爆前後の写真などを収め、平和学習に生かしてもらう。歴史を詳しく掘り起こそうと戦前から被爆時、復興期にかけての状況を知る体験者たちの証言や関連資料を募っている。(水川恭輔)

 市民団体は、2014年結成の「旧被服支廠の保全を願う懇談会」。被爆者や原爆資料館(中区)のピースボランティアたちが中心となり、現存する倉庫4棟(1913年完成)の保全の機運を高めるための講演会などを開いてきた。

 被服支廠は爆心地から約2・7キロにあり、被爆時は臨時救護所として多くの負傷者が詰め掛けた。それまでは、「軍都」の基幹施設の一つとして、軍服などを生産していた。被爆の翌年から県立広島第一高等女学校(現皆実高)などが倉庫を教室に使用し、焦土からの復興に役だった。

 被服支廠の歩みは広島の歴史を象徴的に伝える一方で、同会によると、網羅的な記録集はこれまで出版されていない。被服支廠で被爆した動員学徒世代も90歳近くとなる中、記憶の継承のために広く証言などを集めるには「最後の機会」とみて本の作成を決めた。

 会は作成に向け、被服支廠での勤務や被爆・救護の体験、復興期の思い出などの証言や、亡くなった関係者から家族が生前に聞いていた話などを募っている。関連する写真や手紙・日記などの文書も募集する。

 年内の完成を目指し、県内外の図書館などに配る予定。内藤達郎事務局長(77)は「証言や資料を掘り起こし、しっかりとした記録を後世に残したい」と情報を募っている。内藤さん☎090(6408)1528。電子メールhifukushisho@gmail.com

(2019年7月17日朝刊掲載)

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