×

ニュース

「あの日」の記憶 語る場 故冨恵さんの遺志継ぎ 原爆の日を前に特別版

 広島市中区の繁華街で続く毎月6日の被爆証言会「原爆の語り部」の特別版が4日、同区のライブハウスであった。証言会は、2年前に37歳で亡くなったバーテンダー冨恵洋次郎さんが始め、仲間が思いを継いでいる。原爆の日を前に、ライブを合わせた特別版を企画した。

 今回の証言者は、野球解説者の張本勲さん(79)の姉で、段原新町(現南区)の自宅で7歳の時に被爆した小林愛子さん(81)=兵庫県加古川市。無数のガラス片を浴びた母の「勲を連れて逃げんさい」との声に押され街中を逃げ、川の水をすくうと「いつもきれいな水が赤や茶色でどろどろしていた」と、悲惨な状況を語った。

 小林さんは核兵器禁止条約の締結を全ての国に求める国際署名を集めており、集まった約120人にも賛同を呼び掛けた。参加した東区の会社員藤原恵さん(45)は「平和学習で被爆証言になじみはあったが、大人になって聴くと受け止めが違う」と話していた。

 冨恵さんは2017年7月に肺がんで亡くなった。証言会はシンガー・ソングライターのHIPPYさん(38)たちが遺志を受け継ぎ、毎月開いている。今回の特別版ではHIPPYさんたちのライブがあった。(加納亜弥)

(2019年8月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ