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福山空襲74年 反戦誓う 慰霊式や平和集会

 福山市の市街地の8割が焼失した福山空襲から74年を迎えた8日、「原爆・福山戦災死没者慰霊式」が同市霞町の中央公園であった。平和集会もあり、被災者や遺族、市民たちが反戦の誓いを新たにした。

 慰霊式には約300人が出席。母子三人像前に、市内の小中高生が作った4万羽を超える折り鶴や花を手向けた。市は今年、福山空襲で亡くなったとして市戦災死没者名簿に新たに1人を加え、犠牲者は355人となった。枝広直幹市長は「平和の大切さを次世代に伝えることが、今を生きる私たちの使命」と述べた。

 松浜町のリーデンローズであった平和集会には約1100人が参加した。長崎県内の若者でつくる「ナガサキ・ユース代表団」のメンバーが、長崎での原爆被害などの講演をした。

 いずれも原水爆禁止運動福山推進連盟の主催。平和集会に参加した三吉町の開原知子さん(74)は「平和を真剣に考える若者の姿に触れ、頼もしく思った」と話した。(吉原健太郎、川村正治)

若い世代へ「伝えていく」 「ピース・ラボ」メンバー

 「平和はとても壊れやすい。一人一人が主役となって守っていかなければ」。市内の中高大学生7人が慰霊式で戦争体験の継承を誓った。その1人、福山暁の星高1年川西満葉さん(15)は今春、曽祖父の上甲(じょうこう)行雄さん(95)の戦争体験を家族から聞いたことが、登壇のきっかけとなった。

 7人は福山市人権平和資料館の連続講座「ふくやまピース・ラボ」のメンバー。福山空襲の体験者の証言を聞いたり、平和を考える若者の集いに参加したりして意識を深めてきた。

 川西さんは、曽祖父が旧満州(中国東北部)に従軍したことを知り、「教科書の中のことだった戦争が、ふと身近に思えた」。ラボで学び、「一度戦争が始まってしまえば、平和をつくり直すのはとても難しいこと」と実感した。7人で発表した「追悼のことば」に、平和のため自らも行動する決意を込めた。

 一方、友達との会話で「ふだん平和について話すことがない」と意識の差も感じる。ラボに4年続けて参加する葦陽高2年藤井杏香さん(16)も「知らないのは怖い」と、伝えることの大切さを訴える。

 ラボでは秋、スタンプラリー形式で戦災の跡を巡るイベントを開く。少しでも多くの若者が参加し、戦争の記憶をとどめてもらいたいと、全員で力を合わせる。(吉原健太郎)

(2019年8月9日朝刊掲載)

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