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平和賞の医師が原爆資料館訪問 広島 「被爆者の声伝える」 ムクウェゲ氏

 ノーベル平和賞を2018年に受賞したアフリカ中部コンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲ氏(64)が5日、広島市中区の原爆資料館を訪れた。被爆者の体験談を直接聞き、核兵器のない世界の実現を願った。

 ムクウェゲ氏は、原爆で両親を失った被爆者の笠岡貞江さん(87)=西区=と面会。自宅近くの砂浜に穴を掘って木切れを集めて父親を火葬したことや、戦後に寂しさを募らせながら暮らしたことを聞き、時折目頭を押さえながら感極まった様子だった。ムクウェゲ氏は「暴力は、暴力しかつくり出さない。私たちは被爆者の声を世界に伝える大使になる」と述べた。

 その後、館内で原爆投下で廃虚となった広島の写真などを視察。芳名録に「この場所で完全なる恐怖を経験した。核兵器は廃絶されるべき」などと記帳し、原爆慰霊碑にも献花した。

 ムクウェゲ氏は、政府軍と反政府武装勢力の戦闘が続き、女性の人権侵害が深刻化したコンゴ東部で1999年に病院を設立。性暴力被害者を5万人以上受け入れ心のケアや生活支援に尽力し、ノーベル平和賞を受賞した。(中川雅晴)

(2019年10月6日朝刊掲載)

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