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社説・コラム

天風録 『ドゥテルテと反核の国』

 186カ国の元首や王族が一堂に会した天皇陛下の「即位の礼」。華やかな賓客の中で滞在時間が最も短かったのは、フィリピンのドゥテルテ大統領かもしれない。背中が痛いと言い出し、夜の祝宴は断って機上の人となった▲数日前に側近が止めるのも聞かず、大型バイクを乗り回して転んだ。それが痛みの原因だったとか。「フィリピンのトランプ」と呼ばれて久しいが、傍若無人な言動は話題に事欠かない▲先日訪れたフィリピンで、そのドゥテルテ氏の会見に臨む機会を得た。気分が乗ると大演説をぶつこともあるらしいが、終始穏やか。肩透かしを食う中で、原発建設に関して「わが憲法は好まない」との一言が耳に残った▲かの国は、知る人ぞ知る反核の国。憲法に「自国領内に核兵器の存在を認めない」と明記する。使用済み核燃料に手を加えれば核兵器の原料になり得るのを気に掛けての発言だったろう▲かたや原発大国の日本は使用済み核燃料をためこむ。そればかりか、国連に毎年出す核廃絶決議案の文言がことしは一層後退しているのが分かった。親日家でもあるドゥテルテ氏。いっそ痛烈に批判し、この被爆国の背筋をしゃんとさせてくれないか。

(2019年10月28日朝刊掲載)

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