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社説・コラム

天風録 『米軍機の危険「運転」』

 前をゆっくり走る車が許せないのか。間合いを詰めてせっついたり、ヘッドライトを点滅させたりして威嚇する。そんな「あおり運転」が各地で後を絶たない▲重大事故につながる危険運転なのに罰則が軽かった。批判を浴び、警察庁がやっと腰を上げた。行政処分で最も重い免許取り消しができるよう制度改正を考えるという。悪質ドライバーは速やかに退場してもらいたい▲危なっかしさなら、こちらは免許取り消しでも軽すぎる。中国山地などの上空も飛ぶ米海兵隊岩国基地のパイロットたちの規則違反である。飛行中に手放しで操縦したり、本を読んだり…。その下に私たちの暮らしがあることなど考えもしないのだろう▲戦闘機が全速力で飛べば、たった10秒で5キロ先まで行く。ちょっとの脇見も許されようはずがない。国はとんでもない実態を米軍から知らされながら、詳細を地元自治体に伝えていなかった。感覚がまひしているのはパイロットだけではなさそうだ▲古代中国の杞(き)の国の人は天が落ちてこないかと憂えたという故事がある。現代の私たちの方は、いつか空から米軍機が落ちてこないかと心配しなくてはならないのか。杞憂(きゆう)に終わればいいのだが。

(2019年11月9日朝刊掲載)

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