×

ニュース

毒ガス遺構保全要望へ 環境省に竹原市 歴史資源 進む老朽化

 大久野島(竹原市忠海町)にある旧日本陸軍の毒ガス工場の遺構などについて、竹原市は15日、管理者である環境省に保全を求める要望書を提出する。島内には発電場跡や貯蔵庫跡など約30カ所の遺構が残るが老朽化が進み、昨年の西日本豪雨で被災したままの施設もあるため、歴史資源として維持を求める市の考えをあらためて示す必要があると判断した。(山田祐)

 旧陸軍は同島で1929年から44年までの間、イペリットガスや催涙ガスなど計6600トンを製造したとされる。発電場跡など関連の遺構の風化がじわじわと進んでいるが、現在島を所管する環境省は「文化財指定されていないため、積極的に保存処理することはない」としている。

 要望書は、今栄敏彦市長名。遺構保存のほか、西日本豪雨で山の斜面が崩れて火薬庫跡に土砂が流れ込んだままになっていたり、遊歩道の一部が崩れたりしている現状を踏まえ、環境整備も求める。今栄市長は「島はウサギの人気で一大観光地になっているが、毒ガス製造の歴史を伝承すべき拠点でもある」と強調する。

 毒ガスの製造、運搬従事者たちでつくる被害者8団体と、竹原市など8市1町でつくる大久野島毒ガス障害者対策連絡協議会は、国に医療費手当の拡充などを求める要望活動を続け、3年前から関連遺構の保存も加えている。今回の竹原市の要望書は、同協議会のことしの要望活動に合わせ、今栄市長が直接、環境省の担当者に手渡す。

(2019年11月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ