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被爆樹木の「声」 レンズ通し対話 広島市内でポーランド人写真家 展覧会開催目指す

 ポーランド人でフランス・パリ在住の写真家アレクサンドラ・アダムチックさん(35)が、広島市内で被爆樹木の撮影に励んでいる。人の表情のように見える幹表面の模様や凹凸に焦点を当てる作品で、被爆75年の来年、市内での展覧会の開催を目指す。「無言の証人である木々が訴え掛ける被爆地の願いが伝われば」と思い描く。(小林可奈)

 アダムチックさんは昨年春、旅行で初めて来日。第2次大戦中、多くのユダヤ人らが殺害されたアウシュビッツ強制収容所のあるポーランド出身ということもあり、特別な感情を抱いていた広島に立ち寄った。被爆者の証言を聞き、「75年間は草木も生えない」と言われた焦土に根を張り続け、復興を見守ってきた樹木があることを知った。

 その後も来日を重ね、市内に160本あるとされる被爆樹木のうち、約100本を巡った。写真を撮り始めたのは3度目の訪問となった今春。幹の表面にある凹凸を見つけてはレンズを向ける。「亡くなった被爆者が語り掛けてくるように見える」。現在、4度目の滞在中で、秋の表情を撮りためている。

 「大勢の人に作品を見てもらいたい」とアダムチックさん。被爆75年に合わせた展覧会の会場を探している。「被爆の惨禍を耐え抜き、人々に希望を与えてきた被爆樹木の息吹、生命力を世界の人々に伝え、原爆や平和について考えてほしい」。母国の首都ワルシャワやパリでも巡回展を開くつもりだ。

(2019年12月3日朝刊掲載)

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