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被服支廠「全棟保存を」 広島県に市民団体 「建築学的価値も」

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で、広島県が「2棟解体、1棟の外観保存」の原案を示したのを受け、市民団体「広島諸事・地域再生研究所」(中区)が27日、全棟を安全に保存する方策を再検討するよう県に求めた。

 元広島大教授の石丸紀興代表(79)が県庁で、財産管理課の吉井洋参事に要望書を渡した。築106年の被服支廠は被爆の実態を伝える上、建築学的な価値が高いと主張。解体を決める前に「構造的に安全化できる方法をコンペで募る」ことなどを提案した。

 吉井参事は「地震で倒壊する危険性がある点を理解してほしい」などと原案に理解を求めた。要望後、石丸代表は「一度解体されれば建物は戻らない。決断の前に市民や専門家を巻き込み、どう保存するかを徹底的に検討するべきだ」と訴えた。(樋口浩二)

出入り口工事で立ち入り禁止に 来年3月15日まで

 広島県は28日から、旧陸軍被服支廠で出入り口の門が老朽化し、改修工事が必要になったとして、敷地内への立ち入りを禁じる。工事が終わる2020年3月15日まで、敷地内での見学はできなくなる。

 爆心地に最も近い1号棟のそばにある鉄製の引き戸式の門を、アルミ製に切り替える。建物の周囲にあるブロック塀の撤去工事も本格化させ、西側の市道の通行人の安全確保を図る。

 同じく周囲にある被爆したれんが塀は大部分を保存する。仮に倒れても市道に危険が及ばないよう、別の鉄壁を新設する。

 被服支廠は耐震性がないため建物内の見学はできないが、敷地内への入場は県が事前申請方式で認めている。県によると今年は4~11月に872人が訪問。今月4日に県が「2棟解体、1棟の外観保存」とする原案を公表した後は急増しているという。

(2019年12月28日朝刊掲載)

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