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被服支廠「熟議を」 広島市長、県原案に言及

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を所有する広島県が示した「2棟解体、1棟の外観保存」の原案を巡り、3棟全棟の保存を求める広島市の松井一実市長は10日の記者会見で、被服支廠の将来の利活用について「議論が十分に行われているとは受け止めにくい」とし、幅広い関係者を交えた熟議が必要との認識を示した。

 松井市長は、広島大本部跡地(中区)に市が所有する旧理学部1号館の利活用では、被爆者や地元住民を含む懇談会で議論を重ねてきた経緯を紹介。「関係する人のいろいろな意見をオープンに議論し、受け止める手続きを経た方が、時間がかかっても納得が得られる」とした。

 市は県に被服支廠の全棟保存を求める一方、旧理学部1号館は部分保存とする方針を決めている。松井市長は、1号館はそのまま残すだけでなく平和研究施設を置こうという議論の中で、建物の加工と保存の調和を目指した結果だと説明し、「議論を尽くす中で具体的な扱いを決めるべきだという点で、私の考え方は一貫している」と述べた。

 被爆75年となる今夏の平和記念式典に、国連のグテレス事務総長が参列の意向を示していることについては「心から歓迎したい」と話した。核兵器を巡る国際情勢が不透明さを増す現状に触れ、「核兵器のない世界に向け、世界の為政者の行動を後押しする力強いメッセージを」と期待した。(明知隼二)

(2020年1月11日朝刊掲載)

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