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在韓被爆者 広島で申請 原爆症認定 黄さん 支援者の協力で来日

 在韓被爆者の黄芳子(ファン・バンジャ)さん(75)=ソウル市=が17日、原爆症の認定申請のため、広島市役所を訪れた。本来は韓国で申請できるが、現地の病院の協力が得られず、やむなく支援者の協力で来日した。市役所で会見し、今なお在韓被爆者が置かれる環境の厳しさを訴えた。

 黄さんは「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」の河井章子さん(63)=千葉県流山市=たちの支援で、16日から3日間の日程で来日。この日は広島共立病院(安佐南区)で診察を受けた上で市役所を訪れ、医師の意見書などとともに、原爆症認定や医療特別手当の申請書を提出した。

 黄さんは1945年8月6日、爆心地から約1・2キロの上天満町(現西区)の自宅で母諸正先(チェ・ジョンソン)さん(90年に死去)と被爆し、翌46年に帰国。2017年、ソウルの病院で大腸がんの手術を受けた。原爆症の認定申請には医師の意見書が必要だが、協力を得られなかった。

 在外被爆者による裁判や運動により、認定申請は10年4月から在外公館を通じて可能になった。黄さんは「制度は整ったのに広島に来るほかなかった。韓国の医療現場では原爆への理解が進んでいない」と訴えた。

 在外被爆者が被爆者健康手帳を取得する難しさにも触れた。黄さんは19年10月、姉の英子(ヨンジャ)さん(83)とともに約15年がかりで認定された。「広島で生まれて被爆し、帰国後も困窮を強いられた事実がなかなか認めてもらえず、悔しかった」と振り返った。(明知隼二)

(2020年1月18日朝刊掲載)

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