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社説・コラム

天風録 『軍拡「復刻」はごめんだ』

 絶版になった漫画を厳選して復刻する出版社がある。多少値が張っても買い求める人もいるようだ。1970年代にテレビアニメにもなった「バビル2世」も順次復刊されつつある。「アラ還」世代には懐かしい▲超能力を備えた主人公が悪の帝王と戦う物語。魅力を加えたのが個性的な「武器」だった。黒ヒョウは何にでも変身でき、鳥型ロボットは超音速で飛ぶ。そして人型ロボットは海の戦いに強い。ギリシャ神話の海神ポセイドンと同じ名だから当然か▲あやかろうとロシアも、その名を新型魚雷に付けた。プーチン大統領が躍起になっている新兵器開発の一つという。核弾頭も搭載できるというから恐ろしい。これでは悪の帝王に近いのではないか▲黙っておけないと米国は小型核を載せたミサイルを潜水艦に配備した。「使える核」という言語道断の兵器である。このままでは、どんな未来が人類を待っているのか不安は募るばかり▲米ロとも、冷戦さながらの意地の張り合いに突き進むつもりか。軍事力増強の甚だしい中国も加わって三つどもえになりかねない。軍拡競争の「復刻」なんぞに、誰も価値を認めまい。アラ還世代に限った思いではないはずだ。

(2020年2月6日朝刊掲載)

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