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広島で被爆。朝鮮戦争も経験 原爆孤児の半生記録 真庭の吾郷さん 証言本刊行

 被爆者の友田典弘(つねひろ)さん(84)=大阪府門真市=の半生を書いた「原爆と朝鮮戦争を生き延びた孤児」(新日本出版社)が刊行された。爆心地から約460メートルで被爆し、原爆孤児となって朝鮮半島に渡った人生をたどる。真庭市の吾郷修司さん(53)が証言をまとめた。

 友田さんは当時9歳で、袋町国民学校(現袋町小、広島市中区)4年生。校舎地下室にいて被爆した。校庭で建物疎開の後片付けをしていた多くの児童は黒焦げの死体となり「みな口を開け、ただ歯だけが異様に白く光って見えた」という。

 同小2年の弟幸生さんと母タツヨさんも原爆の犠牲になり、友田さんは一人に。約1カ月後、自宅に下宿していた朝鮮人男性と朝鮮半島へ渡った。

 家出をして再び孤児となった友田さんは、ソウル市内の市場や駅で路上生活を繰り返した。14歳の時には爆弾が目の前を飛び交う朝鮮戦争も経験。原爆投下から15年後に帰国した。

 出版は、小学校教諭の吾郷さんが2016年8月、袋町小平和資料館(中区)でガイドから友田さんの体験を聞いたのがきっかけ。児童向けに戦争や平和に関する劇の脚本を書いていた経験から関心を持ち、友田さんの自宅を訪ね当時の話を聞いた。

 昨年には、2人で広島と韓国を訪れ、ゆかりの地を巡った。被爆後に逃げた比治山(南区)や、ソウル市内で勤めていたパン店があった場所などでも記憶をたどったという。

 吾郷さんは「原爆孤児として多くの苦しみを経験した友田さんの言葉には説得力がある。人生に悩む子どもたちに生きることの大切さを知ってほしい」と話している。1980円。(新山京子)

(2020年2月12日朝刊掲載)

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