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被爆75年事業 遅れや延期 新型コロナの拡大受け

 広島市が被爆75年に合わせて企画した事業が、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けている。予定していた18事業のうち、旧中島地区の被爆遺構の展示整備など8事業で、遅れが生じたり、延期や中止を決めたりした。感染収束後も流行の第2波に備える必要があるため、影響はさらに広がる見通しで、市は対応に頭を悩ませている。(明知隼二、寺本菜摘)

 旧中島地区の被爆遺構は平和記念公園(中区)の地下に残る。市は被爆75年の2020年度中の公開を目指すと決定。平屋の見学施設を建て、焼け落ちた住居の土壁の実物、焼けて炭化した畳や板材のレプリカといった遺構をその場で展示する整備方針をまとめた。

 実現に向けて19年度中に基本計画をまとめるはずだったが、新型コロナの影響で受託した東京のコンサルタント業者との会議すらままならず、いまだに作成できていない。8月6日の仮展示の実現も不透明で、市被爆体験継承担当は「あらゆる面で見通しが立てづらい」と困惑する。

 市は被爆75年関連で18事業を企画し、20年度一般会計当初予算で計9億8300万円を手当てした。このうち8月3~6日に市内で開く予定だった平和首長会議の総会の延期が決まるなど、既に8事業で何らかの影響が出ているという。

 市内に散在する被爆建物の訪問などを推進する「ピースツーリズム」では、外国人観光客を対象にしたニーズ調査を先送りした。9月の国際平和博物館会議はオンラインによる会合への切り替えが決まり、関係者の広島訪問は中止される。

 ほかに3事業で影響が生じる見通しで、6事業で対応を検討中。現段階で計画に変更がないとしているのは、広島大本部跡地(中区)の被爆建物、旧理学部1号館を紹介する企画展(10~11月)しかない。

 8月6日の平和記念式典も縮小を視野に開催方法を協議するなど、感染リスクを前提とした対応は不可避となっている。市国際平和推進部の村上慎一郎部長は「75年の節目の訴えが新型コロナで制限されるのは残念だ。高齢の被爆者が自由に動きづらい中、何ができるのか考えていく」と説明している。

(2020年5月21日朝刊掲載)

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