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人間魚雷の非道さ訴え 周南の回天記念館 配属前整備員の手紙発見

 旧日本海軍の人間魚雷「回天」の出撃基地があった周南市大津島の回天記念館で、整備員として配属される前の兵士が特攻兵器の非道さについてしたためた家族宛ての手紙が見つかった。同館の研究員は「基地に回天を批判的に考える人間がいたことを示す貴重な資料」としている。

 長崎県出身で回天整備員だった恵美須忠吉二等兵曹が、長崎の基地から異動する前の1944年9月ごろに家族へ宛てた手紙。同月に大津島には基地が開設されており「皆の話しでは特潜(特殊潜航艇)か人間魚雷かも解(わか)りません」と赴任先の仕事について記す。その上で「命は的(特潜)になりません」と特攻兵器の使用を批判している。回天記念館の三崎英和研究員(64)によると、当時は特殊潜航艇が「的」と呼ばれていたという。

 手紙には「親類ノ祖母ニ依頼した物」とも書いてあり、郵便ではなく手渡しで届けられた可能性が高い。このため検閲に遭わず、極秘だった回天の情報や軍に批判的な内容の記載をためらわなかったとみられる。

 恵美須二等兵曹は45年7月、マリアナ諸島沖で乗っていた潜水艦が攻撃を受けて戦死。三崎研究員は「特攻を許せない思いがあっても回天に関わらなければならなかった。戦争の悲しい現実を伝えている」と説明する。

 同館は回天関係者の遺品や手紙など約1300点を所蔵。デジタル画像で保存する作業を進める過程で手紙を確認した。同館は2日から、この手紙や乗組員の遺書など約1300点のデジタル画像について、タッチパネル式の展示装置で公開している。(川上裕)

(2020年7月4日朝刊掲載)

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