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「原爆の子」カードで学ぶ 西区の印刷会社 小学校に寄贈へ 建立の歴史 紹介

 印刷会社の新生(広島市西区)は、平和記念公園(中区)の「原爆の子の像」が建てられるまでの実話を紹介する朗読カードを作成した。原爆孤児の職業訓練所として1953年に創業した歴史を持っており、企業の平和貢献活動として取り組んだ。小学校に贈り、平和学習に役立ててもらいたいという。(桑島美帆)

 2歳で被爆して10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんの同級生で、被爆者の川野登美子さん(78)=中区=が協力した。カードの文章は川野さんが7年前に出版した「原爆の子の像 六年竹組の仲間たち」を基にしている。

 教室で1人1枚ずつ朗読できるよう、B6サイズ36枚にした。「禎ちゃん」がリレーの練習に励んだ学校生活のほか、6年生の時に入院した禎子さんが「治るまで折るんじゃ」と無心で鶴を折っていた様子を描写。禎子さんの死後、同級生が像の建立に向けて募金活動をしたことを振り返る。

 「国民学校」「ABCC(原爆傷害調査委員会)」などの用語も解説。「白血球が10万を超えた時、禎ちゃんはどんな気持ちだったか」「世界平和のため自分にできることは」などの質問も裏面に掲載した。

 創業者の森本耕正さん(94年に73歳で死去)の孫ひかりさん(36)と生産部長の小西彩子さん(38)が取り組んだ。ひかりさんは毎年8月6日、祖母の故朝子さんから現在の中島町(中区)付近で被爆した体験を聞かされた。しかし「怖くてしっかり聞けなかった。今聞きたいと思ってもかなわない」。後悔が朗読カードの作成につながった。

 法人向け製品の製造過程で出る残紙を活用し、30セットを作成。小学校を訪問して証言活動をしている川野さんを通じての寄贈を想定する。川野さんは「証言を聞くだけで終わらず、禎ちゃんの苦しみも、クラス全員の建立運動も、昔話ではなく自分のこととして捉えてもらいたい」と期待を寄せている。

(2020年7月5日朝刊掲載)

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