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今につながるヒロシマ 映画「おかあさんの被爆ピアノ」 17日から広島公開

五藤監督 心の隔たり 埋めた音色

 全国で被爆ピアノのコンサートを開く被爆2世で調律師の矢川光則さん(広島市安佐南区)の活動を通して原爆を考える映画「おかあさんの被爆ピアノ」が17日から、広島市中区の八丁座で公開される。脚本も手掛けた五藤利弘監督は「ヒロシマもナガサキも遠い過去ではなく、今を生きる私たちにつながっている。そのことを映画を通して感じてもらいたい」と語る。(里田明美)

 被爆ピアノをトラックに積んで全国を回り、音色を届ける矢川さん。東京育ちの大学生菜々子は、広島の祖母宅にあった被爆ピアノを母親が矢川さんに託したことを知る。矢川さんのコンサートを訪れ、ヒロシマについて考えるようになる。矢川さん役を松江市出身の佐野史郎、菜々子役をAKB48の武藤十夢が演じる。

 新潟県長岡市出身の五藤監督。10年前に被爆ピアノを題材としたドキュメンタリー番組を作ったのがきっかけで、映画化に踏み切った。実際に被爆ピアノを矢川さんに寄贈した家族や被爆者から話を聞き取り、物語をつくりあげていったという。

 2019年5、6月に広島ロケをした。本物の被爆ピアノを使い、矢川さんの父親の被爆体験もそのまま物語に盛り込んだ。あえて被爆の生々しい描写は避け、祖母、母、娘へ、世代を超えて伝えたい思いに重点を置く。広島市出身の映画美術監督の部谷京子が美術を手掛けた。

 ヒロシマを語りたがらない被爆2世の母と、知ろうとする3世の娘。被爆ピアノの音色が二人の心の隔たりを埋めていく。五藤監督は「主人公は『ヒロシマを知らないことが分かった』と語る。これがヒロシマを知る始まりになる」と話す。被爆地の出身ではないが、語り継ぎ、伝え残そうとの思いで撮影に取り組んだ。

 24日からは呉市の呉ポポロシアターでも上映する。映画の自主上映に取り組むシネマ・キャラバンVAGが今夏に県内巡回上映を予定している。シネマ・キャラバンVAG☎082(285)8165。

(2020年7月13日朝刊掲載)

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