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核廃絶願い紡ぐ糸 松江の西尾さん タペストリー6枚目 被爆死の同級生 223の星に

 原爆で多くの同級生を亡くし、平和の祈りを込めたタペストリー作りを続ける広島市出身の西尾幸子さん(88)=松江市比津が丘=が被爆75年のことし、6枚目となる新作を完成させた。新型コロナウイルスの影響で、証言や核廃絶を訴える活動がままならない中、「今も彼女たちの無念が心から離れない。自分にできることで伝え続ける」と力を込める。(三宅瞳)

 新作は、青地の布に原爆ドームを刺しゅうし、223個の星をあしらった約1メートル四方の一枚。「地平線の先に核兵器のない世界が見えています」とのメッセージも記した。2010年の平和集会で国連事務総長だった潘基文(バン・キムン)氏が演説した一部で、核廃絶への思いを込めた。

 1945年8月6日、広島第一高等女学校(現皆実高)の同級生223人が、爆心地から700メートル付近での建物疎開作業中に亡くなった。13歳だった西尾さんは、現安来市伯太町の母親の実家に疎開しており、着の身着のまま逃げてきた家族から友人の無念を聞いた。

 1年半後、亡くなった親友の母親が自死したことも知った。「原爆は人間らしく生きることも死ぬこともできなくする」。無力感から一時は口を閉ざすように。徐々に証言活動に取り組み、被爆50年の95年、タペストリー作りを始めた。

 原水爆禁止島根県協議会(県原水協)で代表理事を務める西尾さん。節目のことし、米国ニューヨークでの日本原水協の原水爆禁止世界大会にメンバーを送り出す予定だった。だがコロナで中止となり、小学校での証言活動も減った。広島市の平和記念式典への参列も諦めたが、「自分ができることを」とタペストリーをはがきにして配るという。

 「人間がつくった核兵器は必ず人間がなくせると信じ、訴え続けたい」。タペストリーは、西尾さんの人生をたどる朗読劇を催す竹矢公民館(松江市八幡町、8月2日)や、洞光寺(同市新町、同9日)などの会場で展示する。

(2020年7月30日朝刊掲載)

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