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被爆前の街 色鮮やかに 戦前・戦争 355枚をAIでカラー化 写真集 東京大の庭田さんら出版

 戦前から終戦直後までに撮影された写真を人工知能(AI)技術でカラー化して収録した写真集を、東京大1年庭田杏珠さん(18)=広島市東区出身=が同大大学院の渡邉英徳教授(45)との共著で出版した。爆心直下の被爆前の街並みなどを、色鮮やかに「再現」している。

 新書判の「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」で、これまでに手掛けた千枚以上の中から355枚を選び掲載している。太平洋戦争中に空襲で焼け野原と化した東京と大阪、地上戦が行われた沖縄の惨状、終戦後の市民の生活―。色付け後、持ち主に見せたり資料を調べたりして綿密に取材し、実際の色に近づけようとした。

 庭田さんは広島女学院高の在学時から、渡邉教授の指導で写真の収集とカラー化に取り組んでいる。広島関連の約50枚は旧中島地区が中心で、元住民から原爆に奪われた家族や季節の行事の思い出などを聞き取り、編集に生かした。カラー化写真の一部は被爆建物レストハウス(中区)にも展示されている。

 庭田さんは「本を手に広島へ来てもらい、人々の生活を想像してほしい」、渡邉教授は「戦争体験者と若い世代の対話が、写真をきっかけに生まれている。カラー化の作業を通して貢献していきたい」と話す。光文社刊。472ページ。1650円。(山本祐司)

(2020年8月3日朝刊掲載)

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