中国新聞TOP連載「記憶を刻む」原爆・平和情報


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若者の認識・行動

継承に向けて

原爆投下の是非

米の「核の傘」

「被爆者」意識

自由記述<若者>

自由記述<被爆者>

若者への質問と回答

被爆者への質問と回答

解説

解説

能動的な姿勢こそ鍵
被爆地の使命忘れず

 原爆投下から六十年を前に中国新聞社が被爆者と若者を対象に実施したアンケートでは、体験継承の現状をめぐる認識の開きが明らかになった。原爆投下の是非、米国の「核の傘」依存への賛否などをめぐっても、両者の意識には隔たりがある。被爆者と次世代が思いを通わせ合い、体験継承と核兵器廃絶への新たな一歩を踏み出す。その必要性を、アンケート結果は訴えかけている。

 被爆体験をどう受け継いでいくか。手がかりはある。「知らないのではなく、知ろうとしないのが問題だ」(大学四年男子)「被爆者自身も勇気をもって語る必要がある」(七十代男性)―。自由記述欄に記された若者の自戒と被爆者の決意が示すように、両者の認識はほぼ共通する。

 この両者の思いをどう結びつけていくかが、鍵となる。「情報が一方通行では継承できない。興味、関心を持つように、受け継ぐ側が能動的になりたい」。大学一年の女子は、こう指摘した。その能動的な姿勢をはぐくむ平和学習や、家庭内での語らいが欠かせない。

 アンケートでは意外な結果も出た。米国の「核の傘」の必要性は、被爆者の23%強が認めた。不要とする24%強とほぼ並んだ。過半数が不要とした若者に比べ、被爆者に不要論が極端に少ない。

 日本政府は核兵器廃絶を唱える一方、安全保障を米国の「核の傘」に頼る姿勢をみせてきた。これに対し被爆者団体などは「自己矛盾」だと批判してきたが、被爆者の間には浸透し切ってはいないことがうかがえる。

 若者は、原爆投下を容認・受忍する層が25%を超え、被爆者を6ポイント強上回った。非戦闘員である一般市民の命をも一瞬にして奪った原爆。放射線を浴びた被爆者は今なお後障害におびえ続ける。核兵器は国際法違反の非人道的兵器だと、被爆者が訴えてきた理由だ。その認識が、被爆地の若者に十分には定着していないことも、気になる。

 被爆者も若者も七―八割は、近い将来の核兵器廃絶は困難とみている。北朝鮮などの核兵器拡散の動き、米国に象徴される核兵器保有国の姿勢が背景にあると考えられる。が、国際政治の現実への追随だけでは、被爆地の訴えは輝きを失ってしまわないか。

 被爆体験の継承には大きく二つの意味がある。原子雲の下で何が起きたか、事実を未来に引き継ぐ。同時に二度と核兵器は使わせず、早期の廃絶を目指す―。教育現場や行政も含めた被爆地が、その使命の重みを見つめ直し、目的を再確認しながら継承の営みを強める必要がある。

(宮崎智三)


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