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世界のヒバクシャ

5.当局と住民 交渉決裂

第4章: インド・マレーシア・韓国
第3部: 放射能不安―韓国「核」発電所

調査方法でも対立

 原発建設当時いた1万2千人の労働者が去った後、里に残ったのは空き家と借金の山だった。昔からの名産クルビ(グチ)の漁獲も激減した。住民たちは「原発が稼働して生活基盤が崩れた」と韓電に補償を求め続けている。

 「広島・長崎の調査では、被爆者と非被爆者との間に遺伝的な有意差はないが…」。私たちがこう水を向けると、「日本政府が数字を曲げて発表しているのではないか」と副委員長の崔竜万(チョイ・ヤンマン)さん(43)が反論した。住民の原発不安の背景には、徹底的ともいえる政府・韓電への不信が潜んでいる。

 事態の収拾に追われる科学技術処の崔鴻植(チョイ・ホンシク)放射線課長は「騒ぎは、原発に対する無知が原因だが、過去の経緯、社会の変化も見逃せない」と微妙な言い回しをする。民主化宣言後、韓国では原発建設に絡む前政権時代の不正疑惑や数々の事故が明るみに出た。崔課長は「原発自体は安全。でも国民の声には誠意をもって対応する」と付け加えた。

 同処は1989年8月、霊光での「事件」を契機に、半径3キロ以内の全住民の疫学調査を実施すると発表し、「城山里の住民が推薦する医師も調査団に加える」と譲歩した。しかし、双方同数の医師で調査団を編成するよう求める住民との間で、議論は平行線をたどっている。一度噴き出した不信と不安は、とめどもなく広がる。