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原爆記録写真

「65年前の私」見つけた 戦後復興写真集 念願の閲覧

 広島市南区の久西博子さん(88)が、65年前に著名な写真家木村伊兵衛(1901~74年)に写してもらった自分の姿と対面した。写真を収めた写真集「LIVING HIROSHIMA」は中区の広島県立図書館が所蔵。図書館が、当時撮影された写真をインターネット上で公開したのを機に、久西さんが閲覧を申し入れた。

 久西さんは12日、ひ孫も合わせて親子4代で図書館を訪れた。普段は閲覧できない写真集を職員に開いてもらい、自らが写る写真を確認すると笑顔を見せた。

 写真は、三段峡の滝を眺める女性3人の後ろ姿。そのうちの1人が久西さんだ。「一張羅の赤いブラウスを着て行った。翌年結婚した夫にも撮影されたことを自慢したんです」と懐かしんだ。

 当時23歳。戸河内町(現安芸太田町)の農協に勤めていた。町役場を通じてモデルの依頼があった。木村が三段峡や八幡高原を撮影した計19枚に写る。撮影後、写真を見る機会はなく「ずっと気掛かりだった」という。

 図書館は3月、木村たちが撮影した4588枚をホームページ(HP)に掲載した。戦後の広島の暮らしや文化を切り取った写真を、多くの人に見てもらうためだ。写真の公開を伝える中国新聞の記事を久西さんが読み、図書館に問い合わせた。

 図書館は現在、写真集を館内で閲覧できるよう、秋ごろをめどに複製本の制作を進めている。「復興を伝える写真集に載ったことは、感慨深い」と久西さん。内田健二館長は「立ち上がる広島を、被爆2年後にプロが記録した貴重な資料。さらに関心を寄せてほしい」と話している。(野田華奈子)

写真集「LIVING HIROSHIMA」
 原爆投下から2年後の1947年8~10月に撮影、49年に発行された。国内外に被爆地の復興をアピールし、宮島、三段峡などの魅力も伝えて観光客を呼ぶ目的で、広島県観光協会が企画。当時、第一線で活躍していた写真家の木村伊兵衛、菊池俊吉、大木実の3人が県内全域で撮影した。被爆の実態を伝える写真もある。県立図書館は、3人が撮影した当時の写真(密着プリント)4588枚を所蔵。写真集には、うち378枚が使われている。

(2012年8月19日朝刊掲載)