8・6伝えるため学ぶ 広島の中高生931人アンケート
12年8月6日
 中国新聞のジュニアライターが、広島県内の中学、高校に通う生徒931人(中学生56人、高校生875人)に、原爆や核に関する平和アンケートを実施(じっし)しました。広島原爆の投下日時の正解率が予想以上に低く、核兵器の必要性を認める意見も目立ちました。結果を受け、ジュニアライター8人が、加害の歴史も含(ふく)めて学び続けて発信する大切さや、正確な情報や知識を得た上での発言や行動の重要性について話し合いました。 
  広島に原爆が投下された日時は、777人(83・5%)が正解。一方、長崎に原爆が投下された日時の正解者は、346人(37・2%)にとどまった。 
  体験した平和学習の数が多い人ほど正解率が高い傾向が見られる。しかし被爆体験を聴いたり、原爆資料館(広島市中区)を見学したりした経験があっても、間違っている人がいる。不正解者は、正確な時刻が分からないケースが多く、無回答の人も目立った。 
  平和学習について、「事前、事後の学習が大切」「受け身だけでなく、ディスカッションなどがよい」との指摘が目立った。「高校生になっても学びたい」「被爆者から直接体験を聴く機会を増やして」など積極的な意見も多かった。広島市以外の小中学校に通った高校生は「どれもやっていない。なぜやらないのか」と母校の対応を疑問視する。原爆被害だけでなく、日本の加害の歴史を学ぶべきだとの声もあった。 
  核兵器が「必要」「どちらかといえば必要」と答えた人の理由には「抑止力」「自国を守るため」との声が目立つ。「不要」「どちらかといえば不要」と答えた人は「後々も後遺症が続く」「テロに使われそう」「存在していると使ってしまう可能性がある」などの理由を挙げていた。「一国が保持していると他国も保持し、終わりがない。地球が滅ぶ」「争いは話し合いで解決すればいい」との意見もあった。 
  原発は「必要」「どちらかといえば必要」と答えた人は「ないと生活できない」「経済が悪くなる」など電力不足を懸念。「原発と同じ電力をまかなえる方法が確立するまで」と条件付きで認める答えもあった。「不要」「どちらかといえば不要」の人は、事故による危険性や放射性廃棄物の処理問題を指摘している。「事故時の対策が確立されておらず、尻ぬぐいするのは私たち子ども」などの意見があった。 
  ≪平和アンケート≫ジュニアライター21人が、同級生ら主に広島県西部の15中学・高校に通う生徒に、核兵器や原発についての意識を問うアンケート用紙を配り、931人に答えてもらった。 
 投下日時・平和学習
   ―広島原爆の投下日時の正解率は83・5%でした。どう考えますか。
  A 16・5%も間違(まちが)っていて驚(おどろ)いた。 
  B 岩国市など広島県外から通っている人は結構知らない。 
  C 平和学習をしていない学校に通う人は、忘れているのではないか。 
  D うちの学校は8月6日も普通(ふつう)に補習授業をやっている。 
  E うちも平和学習はしていない。広島市外だからかも。 
   ―長崎原爆の投下日時の正解率は37・2%でした。
  F 長崎については、学習してきていないのが出た結果、かな。 
  G 確かに、長崎について平和学習をした記憶(きおく)がない。 
   ―印象に残っている平和学習はありますか。
  A 中学時代、小学校区ごとに、地元で開かれる慰霊祭(いれいさい)に行っていた。 
  E 小学校で被爆ピアノの演奏会があった。ガラスがささったままのピアノのきれいな音に感激した。 
  H 漫画(まんが)「はだしのゲン」がいい。小学校の図書室に置いてあって何回も読んだ。原爆を絡(から)めてゲンの成長が感じられる。 
  C 「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」も好き。
  E 絵本は子ども向けで、大人向けの分厚い本は読むのがおっくう。自分たち世代が読みやすい本が少ない。 
  B 原爆被害だけじゃなくて、加害の歴史も学ぶべきだと思う。 
 核兵器の必要性
   ―核兵器の必要性については、賛成派が163人(17・5%)、反対派が763人(82・0%)でした。
  A テロとか何かのきっかけで使われたら危険。 
  D 抑止力(よくしりょく)のために必要だというのは、子どもっぽい気がする。それに数を減らしても、持っていることに変わりない。持たないならゼロにした方が潔い。 
   ―軍隊・軍事力の必要性については、賛成派が56・3%、反対派が43・2%でした。
  A 東日本大震災(だいしんさい)で自衛隊が活躍(かつやく)したのが大きいのでは。警察や消防では限度がある。
  C それなら軍隊じゃなくても、人を守る組織をつくって災害時に助ければいい。自衛隊の「後方支援(しえん)」も、結局は対立しているどっちかの味方をしていることになる。 
  A 平和に貢献(こうけん)するならいいんじゃない。 
  C 「平和」だといっても、どっちかにつくと、反対側にとっては敵になってしまう。 
  G 全ての国が持たずに、話し合いで解決すればいい。 
  D 国と国が戦って被害を受けるのは一般(いっぱん)の市民。トップ同士で話し合うか、一騎打(いっきう)ちをすればいい。市民を巻(ま)き込(こ)むのは良くない。 
 原発の必要性 
   ―原発については肯定派が52・0%、否定派が47・0%でした。
  G 何を一番に考えるか。生活の利便性か安全性か。今は利便性が優先されているのではないか。
  F 今までより不便な生活になっても、生活できないわけじゃないと思う。 
  A 電力会社や政府が言ってることが信用できない。原子力推進ありきで、作為的(さくいてき)なものを感じる。 
  B いろんな情報が飛び交いすぎて、何が正しいか分からない。 
  D いろんな情報、知識を持った上で、自分が正しいと思うことをやり抜(ぬ)けばいい。 
 ≪座談会参加者≫ 
 高3・野中蓮 
 高2・秋山順一 
 高2・井口優香 
 高2・坂田弥優 
 高2・田中壮卓 
 高1・寺西紗綾 
 中3・河野新大 
 中2・松尾敢太郎 
 (2012年8月6日朝刊掲載)

						
						
						
						
						
						






