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ジュニアライター発信

モーストの会 毒ガス被害者を支援

 NPO法人モーストの会(広島市東区)はイランの毒ガス被害(ひがい)者を支援(しえん)しています。理事長の津谷(つや)静子さん(58)の夫で医師の隆史さんが1992年、ロシアを視察したのをきっかけに、94年から主にロシアで医療(いりょう)支援活動を始めました。「モースト」はロシア語で「かけ橋」という意味。世界をつなぐ懸(か)け橋になりたいとの思いで名前を付けたそうです。

 しかし、相手のニーズとこちらの支援が一致(いっち)せず失敗の連続。「もうやめよう」と思った2004年春、広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)のメンバーとして、イラン・イラク戦争中に毒ガスで被災(ひさい)したイランの村を訪問しました。

 被害者から、イランで毒ガスが使われた事実を世界に広めてほしいと言われたのを機に交流を開始。8月6日に合わせて被害者を広島に招く活動を始めました。

 広島を訪れた被害者は最初、「米国がイラクに毒ガスを供給していた。広島も米国から爆弾(ばくだん)を落とされた。共同して米国に立ち向かおう」と言っていました。しかし、1週間の滞在(たいざい)後、帰国する時には、被災を恨(うら)むのではなく、それを伝えていきたい、と考えが変わったそうです。そして彼らの活動により、首都テヘランに平和博物館が開設されました。

 津谷さんは「物理的な薬でなく、心の薬が必要」と語ります。

 また、文化事業をしているNPO法人モースト(同)は10年、原爆投下後の広島に薬を贈って救いの手を差(さ)し伸(の)べた、マルセル・ジュノー博士の生涯(しょうがい)を描いたアニメ映画を製作。彼の諦(あきら)めない生き方を紹介し、12年のセルビアの国際映画祭で特別賞に輝くなど多くの賞を受賞しています。(高2・市村優佳)

(2013年7月1日朝刊掲載)

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