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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 米出身の詩人 アーサー・ビナードさん

「終戦のため原爆」は間違い

 米国出身の詩人、アーサー・ビナードさん(46)が、広島市中区の原爆資料館で開かれた平和教育学習会・懇談(こんだん)会で、平和学習の「模擬(もぎ)授業」をしました。私たちは「生徒」として参加しました。

 1990年に日本に来たビナードさんは6年後の28歳の時、初めて広島で被爆者から体験を聞き、「ピカドン」という言葉を知りました。自分が使うと少し違和感(いわかん)を持ちました。その理由を「原爆についての視点が違(ちが)っていたから」と言います。

 原爆を「核兵器(かくへいき)」と呼べば遠い米国から「人ごと」として、「原子爆弾」ならエノラ・ゲイからきのこ雲を見ている「傍観者」として、「ピカドン」の場合は、実際にあの惨状(さんじょう)を体験した、きのこ雲の下にいた「体験者」として捉(とら)えている、というのです。

 「ピカドン」と言えば、実際に原爆を体験していなくても、原爆が落とされた時の悲しみや苦しみを自分が引き受けることになります。つまり原爆を自分の問題として考えることにつながるのです。

 米国の中学、高校では、「原爆が戦争を早く終わらせた」と教わったそうです。しかし日本に来て「2種類のピカ」があることに気付きました。

 広島に落とされたのはウラン原爆。長崎はプルトニウム原爆でした。ウランは鉱山で採掘(さいくつ)しますが、プルトニウムは自然界には存在せず、原爆を造るにはウランの何倍もの時間と技術が必要なのです。

 「米国は、ウラン原爆をもっと前に完成させていたが、落とさなかった。幾つでも人工的に製造できるプルトニウム原爆が完成するまで待った」と指摘。1945年7月中旬にプルトニウム原爆が完成したのを受け、広島と長崎に「2種類のピカ」を一つずつ落としたというのです。

 「だから、戦争を早く終わらせるために原爆を落としたという教えは間違っている」と語ります。

 私は、今まで原爆を表現する三つの言葉の違いを考えた事がありませんでした。これからは、言葉の意味を考えて使うためにも、もっと核(かく)や戦争について知識を深めていきたいです。(小6・藤井志穂)

 教えられたことや教科書をうのみにせず、物事を深く見ることで間違いに気づき、みんなで一緒に考えられます。僕(ぼく)も与(あた)えられた情報をただ信(しん)じ込(こ)むのではなく、自主的に調べるようにしたい。(中3・中原維新)

(2013年11月18日朝刊掲載)

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