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ジュニアライター発信

毒ガス被害を語り継ぎたい イランの小中高生、冊子・DVD化へ 「ジュニアライター」 本紙取材も縁

 イラン・イラク戦争で使われた毒ガスによる被害者の体験を、イランの首都テヘラン市内の小中高生が取材して継承する「ジュニアライター」プロジェクトが、現地で始まった。被害者に聞き取りした内容を冊子にまとめるとともに、動画を撮影してDVDも制作する。(二井理江)

 このプロジェクトは昨年6月、イランの幼稚園や小学校の教師4人が広島市を訪れ、市教委の担当者らから平和教育について学んだのがきっかけ。同年8月6日には、イランの毒ガス被害者たちが、中国新聞のジュニアライターから取材を受け、事実を次世代に継承していくことの大切さを目の当たりにした、という。

 プロジェクトに参加している教師の教え子らが「ジュニアライター」として、被害を受けた時の状況や現在の症状などを取材している。これまでに2人を取材した、という。冊子やDVDは1人分ずつまとめ、テヘラン市内にある平和博物館に置く予定にしている。

 毒ガスの被害者は40歳代以上が中心。今も気管支や肺、目、皮膚への影響がある。取材した高校1年のアリー・モハッマディー君(15)は「被害者が自身を犠牲にした姿を見たり、話を聞いたりして感動した。そうした行為が無駄にならないよう、良い社会を築く努力をしようと決心した」と話している。

イラン・イラク戦争での化学兵器使用

 イラン・イラク戦争(1980~88年)中、イラク軍はイランにマスタードガスや神経剤を使ったとされる。日本とイランの毒ガス被害者の症例をまとめた図説集「マスタードガス傷害アトラス」によると、10万人以上のイラン人が化学兵器による被害で救急処置を受け、入院した。

 当初は、国境沿いなどでイラン軍に対して使っていたが、87年6月に初めて一般市民を目標に攻撃。イラン北部のサルダシュトでは、当時の人口約1万2千人のうち110人が数日中に死亡した。88年3月には、イラン国境近くのイラクの町ハラブジャで5千人以上が殺された。

(2014年8月25日朝刊掲載)

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