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ジュニアライター発信

ジュニアライター この一作 夕凪の街 桜の国 永続する原爆の脅威

 被爆から70年近くたった今も、多くの人が苦しんでいます。後遺症(こういしょう)や偏見(へんけん)、家族を失った悲しみ、生き残った罪悪感―。戦時中ではなく、戦後を舞台(ぶたい)にした漫画「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」は、原爆の脅威(きょうい)は一瞬(いっしゅん)のものなんかじゃなく永続するものだ、ということを被爆の経験がない私たちに教えてくれます。

 私は、作者のこうの史代さんと同じく、家族が被爆したわけでもなく、体験を語ってくれる親戚(しんせき)もいません。そのせいか平和学習をしても、自分と原爆との接点が感じられませんでした。しかし、この物語の親子3代を通してつづられていく被爆体験や、今に続く苦悩(くのう)や生活は、それまで想像できていなかった身近な人の死について考えるきっかけになりました。そして取材などで被爆者と対話する時、目の前の人が8月6日を経験しているんだと実感できるようにもなりました。

 被爆者の高齢化(こうれいか)や記憶(きおく)の風化が進む中、私たちにできることは記憶を後世に残していくことです。何のため、そうしなくてはいけないのか、この本は教えてくれます。(高3村越里紗)

(2014年6月10日朝刊掲載)

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