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ジュニアライター発信

ジュニアライター この一作 被爆者と遺族の葛藤 「ヒロシマ・ノート」(大江健三郎著)

 この本は、平和記念公園(広島市中区)で開かれた1963年の第9回原水爆(げんすいばく)禁止世界大会の場面で始まっています。大会は、ソ連の核実験をめぐって賛否が分かれて分裂(ぶんれつ)。反核(はんかく)運動は、時代の政治情勢(じょうせい)と強く結びついていました。

 しかし被爆者や遺族は変わりません。混乱した大会会場の背後にあった原爆慰霊碑の前で、ただ静かに祈(いの)り続(つづ)ける姿を描写。原爆症で孫を亡くして発狂(はっきょう)した男性、自ら出産した体の不自由な子どもを見たいと願った母親、被爆がもとで自殺した人たちについても記しています。

 揺(ゆ)れ動(うご)く核に対する立ち位置と、被爆者の現実。それは、その時から50年以上たった今も変わらないと思います。僕が被爆者から聴(き)いた、当たり前の人々のつながりを一瞬(いっしゅん)で壊(こわ)す原爆の恐(おそ)ろしさは、想像を絶するものでした。

 僕たち10代は被爆者の声を直接聴ける最後の世代です。忘れずに受(う)け継(つ)ぎ、核兵器廃絶を目指すまっすぐな気持ちを大切にすべきです。(高3・石井大智)

 原爆や戦争、平和をテーマにした本や漫画(まんが)、映画などのうち、ジュニアライターが感動した作品について10代の目線で紹介(しょうかい)します。

(2014年5月19日朝刊掲載)

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