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ジュニアライター発信

元ジュニアライター、大学で飛躍

 取材や原稿執筆、イベント開催などを通じて平和について考える「中国新聞ジュニアライター」が誕生して1月末で7年を迎える。現在、活動している小学6年から高校2年までの24人を含め、これまでに参加した生徒、児童は計77人。現在、大学に通う「卒業生」は、ジュニアライターとしての経験を生かしながら、各地でさまざまな活動に力を入れている。(二井理江、増田咲子)

カフェ運営 人つなぐ

 

福岡の岩田さん


 田園風景の残る、九州大伊都キャンパス(福岡市西区)そばのカフェ「がやがや門」。冷え込みの厳しかった12月21日夜、子ども連れや学生ら約20人が集まった。地元産の野菜を使った鍋や、住民が持ち寄った料理を囲み、笑顔が広がる。

 「地域の人とのつながりをもっと深めたい」。カフェを運営するサークルの代表で、元ジュニアライターの九州大2年、岩田皆子さん(20)=広島市南区出身=のあいさつを機に、将来の夢や大学での研究の話で盛り上がった。

 カフェは2013年4月、地元の元岡商工連合会の事務所内にオープンした。狙いは、学生たちが地域住民と触れ合うためのきっかけづくり。毎月第3土曜に、こうした住民との交流会を開いている。

 九州大は05年から新しい伊都キャンパスへの移転がスタート。周辺で暮らす学生は増えたものの、地元の人と触れ合う機会は少ない。何とか地域に溶け込もうと、軽食を出すカフェ営業や、地元の母親たちを先生にした自炊教室などのイベントを企画している。

 交流会に参加した元岡商工連合会の熊谷俊明会長(60)は「学生と関わりたいと思ってもチャンスがなかった。カフェを起点にしたつながりを生かし、一緒に地域おこしをしたい」と期待を寄せる。

 ジュニアライターとして5年余り活動した岩田さん。「カフェでの取り組みのように、人と人とのつながりを大切することが、少しでも世界を平和に近づけることにつながる」と信じている。将来、世界の貧困や食糧問題を解決する仕事に関わりたい、と夢を描く。

福島の子に映画上映

 

東京の坂田さん


 駒沢大(東京)1年の坂田悠綺(ゆき)さん(20)=広島市中区出身=は、昨年7月末から、子ども向けの映画を上映する「キンダー・フィルム」(同)の事務局でインターンシップとして勤務。11月には、東北支援として福島県相馬市で上映会を開いた。

 ジュニアライター時代に、映画が持つ平和へのメッセージ性について学んだ坂田さん。「子どもは、映画からいろんなことを吸収して世界が広がる」と考える。ボランティア活動も好きで、参加を決めた。

 キンダー・フィルムでは、海外で作られた映画の権利購入の手続きや、国内各地での上映依頼への対応、上映会の企画書作りなどを担当。東日本大震災以来、3回目となった上映会では、相馬市内外の小中学校にチラシを配ったり、会場を下見したりした。当日は声優を招いて、その場で吹き替えをしてもらった。

 「家に帰って話ができるような良い作品を、親子で一緒に見てほしい」と話している。

学生新聞で取材活動

 

京都の熊谷さん


 立命館大(京都市)1年の熊谷香奈さん(19)=広島市西区出身=は「NEWS立命通信社」に所属。同大を含む9大学でつくる「関西学生報道連盟」として、約70人の仲間と、関西の学生向けに年5回、新聞を発行するとともに、ホームページで情報発信している。

 新聞では、学生に関わるさまざまな話題を取材、掲載。加えて、同大の学生向け紙面も2ページ作る。

 最近、友達から情報を得て、大学内で新しいサークルを設立した1年生2人に取材した。「同い年なのに、熱意にあふれていて圧倒された。すごい刺激になった」

 今月発行の紙面では、留学特集をする予定だ。熊谷さんが発案しリーダーを務める。「何となく行って、何も得られずに帰ってくる人もいる実情を指摘したい」と説明する。

 取材や活動を通して、いろんな人との出会いがあり、楽しかったジュニアライター時代の経験が、立命通信社に入るきっかけになった。「大学からお金をもらっていないので、何を批判しても怒られない。大学生が読んで面白い、と思えるような人にもっと取材したい」と話す。

核問題解決へ医学を学ぶ

 

長崎の西田さん


 長崎大(長崎市)1年の西田千紗さん(19)=写真、広島市西区出身=は昨夏、教官や学生とカザフスタンを訪れた。旧ソ連最大の核実験場に行ったり、核の影響を受けた動物のホルマリン漬けを見たりした。近くの村では、何も知らされずに何十年も暮らし、次々に子どもが亡くなり、自身もがんが多発している人と話した。

 「広島、長崎だけじゃない。世界各地に核で傷ついている人がいる。国を超えて協力して核問題を解決したい」。放射線が人体に与える影響を医学的に学び、世界中の人に分かりやすく伝えたい、との夢を持つ。

 ジュニアライターとして原爆について考えた広島。今住んでいる長崎。両都市の若者による平和交流をしたい、との思いも膨らませている。

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 このほかにも、多くの卒業生が頑張っている。

 看護師を目指している今野麗花さん(19)は「山盛りの課題を頑張っています」とのこと。2月からは本格的な実習に入る、という。古川聖良さん(20)は米ミズーリ州の大学3年生。村重茜さん(20)も現在、米オハイオ州の大学に留学中だ。

 大友葵さん(19)は大学で絵の勉強中。畦池沙也加さん(19)も大学で現代アートを学んでいる。大学で「よさこい」に力を入れているのは、高田翔太郎さん(19)。植木史織さん(19)はフラメンコに取り組んでいる、という。楠生紫織さん(20)は、大学のゼミで地方自治やまちづくりについて研究中。来春の卒業に向けて、「広島県と広島東洋カープ~これからもファンに愛され続ける球団として~」と題して、被爆後の広島に市民球団として発足したカープの歴史、地域密着型プロスポーツの先例としての地域と球団のつながりなどを調べ、今後の展望について提案する予定にしている。

 串岡理紗さん(22)は今春から就職予定。大学時代にサークル「模擬国連」に所属して、気候変動や核軍縮についての会議に参加したり、日中韓で開く大会の日本人代表として海外の学生との交流をしたりした経験を生かして、自動車メーカーのマーケティング部門で働く。多賀谷祥子さん(23)、新山京子さん(24)は昨春から社会人として働いている。

(2014年1月6日朝刊掲載)

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